第16話 部活とお家と

「ねぇ、日向! これとかどう思う?」


「何、新……コスプレ?」


「うん、コスプレ! 富ちゃんとか部活の友達とかとするんだ! 僕に似合うコスプレ、どれだと思う?」


「え、それ俺に聞くのか……これとかどう? 似合うんじゃないの?」

 新にわくわくした顔で言われた俺は手前にあった可愛い衣装を指さす。

 新男だけど割と顔面可愛いし、こういうの似合うだろう……亜理紗にすごく似合いそうなんて思っちゃったのは内緒だけど。


「え、日向これ女の子のキャラだよ……日向のえっち」


「それやめろ、そんなんじゃない。似合うかな、って」


「え~、本当……あ、あれか! 亜理紗ちゃんに着せたいんだ、この衣装! 亜理紗ちゃんに着てほしくて無意識にこういう衣装選んじゃったんだ!」


「は、いや、ちが……そ、そんなんちゃうわ!」


「あ、この前と同じ反応! も~、やっぱりえっちじゃん、日向!!!」

 ……違くないけど!

 なんというか、その……そんなにやにやした顔で見るな新! 全然違くないけど、着てほしいけど!!!



「……コスプレ、か……」


「ん~、どうしたの亜理紗?」


「あ、いや、何でもない!!!」




 ☆


「ねえ、みー君? 私のこれ、上手に出来てるかしら?」


「ああ、出来てるよ! 最高だ、やっぱり君は完璧だよ、ぐーちゃん!」


「み―君! あなたも完璧よ、私もあなたが大好き!」


「ぐーちゃん! 僕も君の事が大好きさ! 」


「……おい美樹、あっち見るんじゃねえぞ。バカがうつるからな」

 へきへきした俺の声に美樹もうんうんと首を縦に振る。


 放課後、部活に入ってないので家に帰る柊木とは一旦目で合図だけしてお別れして、俺は手芸部の部室で部活タイム。


「何言うんだ、日向、いやしゃー君! 僕たちはばかじゃないぞ、なあぐーちゃん! 君への愛は底なしだけどな!」


「そうね、みー君! バカップルかもだけど私たちはばかじゃないわ! 私のあなたへの愛はカンストしてるけど! だからシャー君、私たちはばかじゃないよ!」


「そういう所ですよ、バカップルめ……人いないところでいちゃついてくださいよ、マジで……」

 手芸部自体は校長の趣味とかで布とかミシンとか何でも使い放題だからそこはすごく嬉しいんだけど、でもこの近宮・矢口のバカップル先輩たちだけは何とかしてほしい! 幼馴染だけど二人揃うと嫌すぎる!


 個人個人では悪い人じゃないし、裁縫とかもうまいから部室にいるのは別に問題ないんだけど、マジで最悪の化学反応なんだよな、二人いると⋯⋯一人の時はすごい優しいお兄さんお姉さんなのに。なんで喋り方からキャラまで変わるんだよ、この人たち。

 今もなんかキス始めたし……だから部室でやるな、よそでしろ! 


「……ところで日向君、今は何作ってるの? この前からせっせとミシンとかで何か作ってるけど……それはエプロン?」

 完全にバカップル先輩を無視するすべを手に入れた美樹が、ちくちくと小さなクマのぬいぐるみを縫いながらそう聞いてくる。

 美樹も中学の初めから比べて小物作るのずいぶんうまくなったよな……なんて、この話は今は良いか。


「うん、エプロンだよ。あとポケットとか色々縫い合わせて完成かな?」


「ふーん、誰にあげるの? お母さん?」


「ん~、まあそんなとこ!」

 へこっと聞いてくる美樹に少し笑いながらそう誤魔化す。

 本当は柊木へのプレゼントのつもりで作ってるんだけど、でもまだヒミツの関係だし、これは言わない方が良いし。


「へー、そうなんだ! お母さん、きっと喜んでくれるよ!」


「……そうだね。そうだったら嬉しいな」

 満面の笑みの美樹にそう言われ、嘘をついたことに少し罪悪感が……いやいや、世の中にはついていい嘘もあるんだ!


「んっ、んっ……ねえ、みー君、私このまま……!」


「んんっ……ハァハァ……ああ、いいよ! 俺もぐーちゃんと……!」

 そしてバカップル先輩たちは盛り上がりすぎだ、よそでやれ、単体の時とキャラ違いすぎて怖いんだよ!!!

 マジで部室でやることじゃない、二人の時に⋯⋯ちょっとだけ、羨ましいとか思ってないからね!!! 

 柊木ともこんな⋯⋯なんて思ってないから!



「……いいなぁ……私も日向君と……」



 ☆


 楽しいけど雰囲気とかはかなり地獄の部活動を終えて帰る時間。

「ねえ、日向君。今日家行っていい? お母さんにこの前のお礼、ちゃんと言いたいんだけど」

 帰路に就こうとするとギュッと制服を掴んだ美樹にこう聞かれる。


「ああ、今日は……今日はダメだな、ごめんよ美樹! お礼は俺から言っとくからさ!」

 今日は柊木バイトないし、普通に家にいると思うし! 

 だから今日はダメだ、また今度だね……いずれ美樹にも柊木の話はしないといけないけど。


「そっか、了解……それじゃあ日向君、また明日ね!」


「うん、また明日!」

 少し残念そうに手を振る美樹に俺も手を振って、今度こそ自分の家の方に歩を進める。

 登校の時とは違う、隣に誰もいない一人の帰り道は少し暗くなった夕焼けの空にはちょっぴり寂しさを感じて……でも帰ったらそれ以上の幸せが待っているから頑張って早く帰ろう!!!




「ただいま~!」


「あ、鮫島お帰り! そろそろご飯できるよ、早く着替えてきてね! 今日も私、ちゃんと手伝いしたから!」

 学校から歩くこと十数分、ようやくついた家の扉をギシッっと開けると、いつもの可愛いエプロン姿の柊木がお玉片手にとことこ出迎えてくれて。


「……ふふっ」


「……どうしたの鮫島? 急に笑い出して」


「やっぱり幸せだな、って。家に帰ると柊木が出迎えてくれて、それにご飯も作ってくれて。おはようからお休みまでずっと柊木と一緒にいれる……これってやっぱりすごく幸せだな、って!」


「え、急に何……そ、そう言うのは、あんまり言わないでよ……私だって鮫島と一緒にいられるのすごく、嬉しいよ……ありがとう、鮫島」

 恥ずかしそうに顔を伏せてぼそぼそと小さい声で……お礼を言うのはこっちだよ、いつもありがとう!


「も、もうだからぁ……早く着替えてきてよ鮫島! 早く早く……今日は鮫島の大好きなとんかつだから。頑張って作ったから早く着替えてきて!」

 俺の背中をぐいぐいと押しながらどこか嬉しそうな声でそう言って。


「お、それは楽しみ! 朝もだけどホントありがとね、柊木!」


「……だからありがとうはこっちだよ、鮫島」

 背中の方からくすぐったい囁き声が聞こえる。


 ああ、やっぱり俺は今最高に幸せだ!

 朝もだけど、夜も柊木とずっと一緒で、柊木のご飯を食べて、そのまま色々遊んで……やっぱり俺の新しい日常は幸せに満ち溢れてる!!!



「熱っ!?」


「大丈夫、柊木? ほれ、水水!」


「あ、ありがと……んっんっ……ぷへぇ……鮫島感謝! お水ありがとう!」


「どういたしまして……猫舌なんだから急いで食べちゃダメだよ」


「はーい! ありがとね、鮫島!」


『……』



 ★★★

 そろそろ普通の学校描写書きます。

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