第27話 約束

「あ~、今日も二人で登校してる、日向と亜理紗ちゃん! ふふふっ、やっぱりそういう関係なわけ、日向と亜理紗ちゃんは? もう僕たちが、干渉できない関係まで進んじゃってるんですか!?」

 朝、亜理紗と一緒に教室に向かうと、先に教室に入って真衣ちゃんと話していた新が俺たちにてとてと駆け寄り、にやにやからかうような表情と声色でそんなことを言ってくる。


 まったく新はそういうの大好きなんだから。ここはひとつ、二人で平然と

「あ、新! 違う、まだそう言う……ね、ねぇ、あり、柊木!」


「う、うん! ひ、鮫島と私はそんなんじゃない、たまたま一緒になっただけ、たまたまだから!」

 ……俺たちこういうの下手だな、ほんと。

 全然平然と出来てない、めちゃくちゃ焦って完全に隠してる……いや、隠してはいるんだけど! 態度としてはダメダメ……ほら、完全に新のにやにやが加速してる!


「え~、ほんとかなぁ……えへへ、ほんとかな?」


『ほ、ほんとだって!!!』


「え~、ほんとぉ? 私的にはぁ、もう行くとこまで行っちゃってる気もするけど! 亜理紗、本当の事言っていいよ!!! 私も新君も、翔太君も、富ちゃんも……みんな二人の事、祝福する準備は出来てるよ!!!」


『ま、真衣ちゃんまで……違うってもう!!!』

 いや、本当にまだ違うんです、まだ……本当にまだ、ですから!

 その……早く本当に、なりたいけど。


 でもそれは

「も、もぅ、二人とも……えへへ、違うよ、鮫島とは本当に……えへへ」

 隣でからかわれてるのに、どこか幸せそうに笑う亜理紗のペースで十分だ。

 


 ☆


「それでね、日向! 昨日は僕のが高く評価されてね!」


「おー、それは良かったな、新……っと、先輩からだ。なんだろう、惚気か?」

 休み時間、いつも通り新と話していると、先輩からLIMEが来る。

 タップしてのぞくと「ぐーちゃんが風邪ひいた! お見舞い行くから今日は部室あけないよ! ていうか学校も休んだよ、一日中ぐーちゃんイチャイチャ看病!!!」という内容で……本当に風邪流行ってんのな、最近。

 みんな風邪ひいてるじゃん、美樹も翔太も……で、この調子だと先輩も風邪ひくな、絶対。イチャイチャ看病とか言ってるから明日には風邪ひいてる、これは長年の経験上間違いない。

 まぁ、それはそれとして、今日部室空かないのか……それじゃあ!


「日向、なんて内容だった? もしかしてのろけ?」


「違うわ、夏風邪は怖いな、って話。新も夏風邪に気をつけろよ。じゃあちょっとごめんね」


「うん、僕はいつも気をつけてるよ……って日向? どこ行くの?」


「ちょっとね~。チャイムまでには戻ってくるよ~」

 新たにそう言っててんてんと人の波をかき分けて亜理紗の席へ。


「ちょいちょい、柊木さん。ちょっとそこまで良いですか?」


「……ひ、鮫島何その言い方? 良いけど、その……な、何?」

 トントンと亜理紗の机を叩いて、ちょっと不審そうに、でもどこか嬉しそうに少しほっぺを赤くしながら俺を見る亜理紗を連れて教室の外へ。

 近くの席で真衣ちゃんがニヤニヤしてた気もするけどこの人はいつもこうな恋愛大好き人間なので気にしない、気にしない! 

 朝の一件もあって後ろの方から新のにやにやオーラも感じるけど気にしない、気にしちゃダメ、それを気にしちゃ幸せが逃げていくから!



「……それでどうしたの、ひー君? こんなところ呼び出して」

 人の少ない袋小路に着いた後、亜理紗がいつも通り聞いてくる。

 学校でひー君って呼ばれるの、昨日もだけどやっぱりいいな。


「もう、何にやにやしてるの? もしかして私と話したくて、会いたかっただけ……ですか? 嬉しいけど、それはその……にゃーん」


「ふふっ、それもあるけど、違う用事もちゃんとある。そのさ、今日放課後どっかに遊びに行こう、って誘いに来たんだ! どう、遊びに行かない?」


「え、あ、遊び? 遊びか……なんで急に?」


「いやね、うちの部活、部員の半分が風邪ひいちゃったから今日中止になったんだ。だから放課後暇になったし、だから一緒に遊びに行けたらな、って。今日バイト休みでしょ?」

 それに一緒に住むようになったから全然亜理紗と外で遊べてなかったし、ずっと家で遊んでたし。

 だからたまには外で遊ぶのもいいんじゃないかな、って。


「そうだね、最近モンハンばっかりだったもんね……でもひー君は美樹ちゃんのお見舞い行くんじゃないの? 美樹ちゃん風邪ひいたんでしょ、私も心配だし、ひー君はそっちに行くんじゃないの?」


「ふふっ、それは美樹の方から断られた。風邪移ったらいけないから、ってさ……だから亜理紗が嫉妬することは無くなったよ。という事で一緒に放課後遊びませんか? 俺と一緒に二人でどっか行かない、亜理紗?」


「だから嫉妬なんてしてにゃいって……でも遊びに行くのはその、すっごく、嬉しい! 最近ひー君とお外で全然遊べてなかったから、私も遊びたいと思ってたし……それじゃあおばさんたちに連絡しないとだね。今日遅くなる、って。ひー君と一緒に遊ぶって……えへへ、ひー君と夜まで二人きりって」

 そう言って楽しそうに蕩けた笑顔ではにかむ亜理紗。

 やっぱりこの笑顔最高に可愛い……じゃなくて、俺も学校以外で亜理紗と遊ぶの久しぶりだから楽しみだよ! どこ行くかは放課後までに決めておくね!


「うん、私も何か考えとく! それじゃあまた放課後だね……ふふっ、今日はひー君といつもより長く遊べる。えへへ、ひー君の独り占めだ」


「そ、そうだね! ふふっ、放課後が楽しみになってきた……俺も亜理紗を、独り占めしたい」


「んにゃ!? にゃ、にゃーん、ひ、ひー君、わ、私も、その……あ、チャイムにゃった、急がないと! ひー君、早く帰るにゃ!」

 顔を真っ赤にして嬉しそうなとろとろの笑顔で、でも少し早足で教室に戻る亜理紗の後ろを俺も笑顔で着いていく。


 今日は亜理紗とどこ行こうかな?

 せっかくだから初めてのところとか……ふふっ、楽しみ楽しみ!



 ★★★

 皆さん風邪には気をつけて。

 感想や☆やフォローなどしていただけると嬉しいです!!!


 一瞬間違えて完結ボタン押したんですけど大丈夫です、まだ15話くらいは続きます。

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