第29話 新と遊ぼう


「……で、どこ行くの? この方向ってことは……もしかして今日は日向の家で遊ぶ感じ?」

 学校を出て数分、隣を歩く新がうきうきした表情で聞いてくる。


「ううん、ていうか俺の家と逆だよ、これ」


「あれ、そうだっけ? 日向の家こっちじゃなかったっけ?」


「違うよ、俺の家あっち。ちょっとだけ用事があってね……という事でコンビニよって良いですか?」


「コンビニ? 良いよ、お菓子でも買うの?」


「まあ、ちょっとね」

 新たに許可を取ってコンビニに入る。

 そして手に取るはポカリとみかんのゼリー⋯⋯家の逆方向に来た理由は美樹にお見舞いの品を渡すため、来なくていいと言われても心配だし、一応ドアにかけるくらいはしとこうと思って。


「ん、ポカリにゼリー……さてはお見舞い? 誰かのお見舞いですか?」


「ピンポーン! 美樹が風邪ひいちゃったみたいだから、差し入れだけあげようかな、って思って」


「部活の後輩ちゃんだよね? ふふっ、ちゃんと先輩してるな、日向は」


「新も後輩には優しくしろよ。という事でちょっと会計してくる」

 レジに通したお代は400円。

 まあこれくらいは安いですよ、元気になってくれたら嬉しいからね!


 会計を済ませて少し歩いて、着いたのは茶色い屋根の大きなお家。

 LIMEで「ドアノブのお見舞いかけといたよ」と美樹に送って、そのまま家を後にする。


「お待たせ、どこ行きたい新?」


「あれ? 後輩ちゃんには会わなくていいの?」


「風邪うつしちゃダメだから、って本人が言ってたからね。だから会わないで今日はこのまま帰る」


「なるほど……それじゃあ今日はゲームセンター行こう! 色々やりたいことあるし!」


「ふふっ、新は好きだな、ゲームセンター。良いよ、行こう!」

 にへへと笑いながらそう言う新に俺も笑って頷いた。




「日向君……っていないか。私が会えないって言ったもんね、しょうがないよね……でもお見舞い嬉しいな。ありがと、日向君⋯⋯えへへ、愛されてるのかな、私。えへへ」



 ☆

 

 少し歩いた先にあるゲームセンター。

 今日も機械音ですごくうるさいゲームセンター。


「見てみて、新! 水ぶくれ! リール激しく回しすぎて指に水膨れできた!」


「ほんとだ、そんなことなるんだ……絆創膏いる、新?」


「うん、欲しい!!! ありがと、日向!」

 そんな環境でメダルゲームをすると、新は指に大きな水ぶくれを作って。

 その後色々なゲームをしたけど、結局競馬のゲームで大穴狙いして全部溶かして……やっぱり堅実に生きないとダメだね!



「ふふっ、僕テーブルホッケーは得意だからね! てやっ……って痛っ!?」


「ちょ、大丈夫か凄い音したけど……って血だらけじゃねえか、どうしたんだその指!」


「うええ、テーブルの金属のとこで打った……めっちゃ痛い、血が止まらないよ」


「ったく、はしゃぎすぎ、新。消毒ないから取りあえず絆創膏で我慢してね」


「うん、我慢する、痛いの我慢する……ありがと、日向」

 ホッケーでは右手に大けがをして。

 その後の試合は利き手縛りでなかなかの接戦だったけど何とか勝利をものにした。

 怪我人には負けられないよ、流石に……金属のとこにも血ついてるしめっちゃ痛そう。大丈夫かな、新?


「ふふ~ん、平気平気! 負けたことの方が悔しい! 次行くよ!」

 まあ、本人がこういうなら平気なんだろう、もう次のところに走ってるし。



「気を取り直して次はこれだよ、格ゲーしよう! 僕格ゲーも強いからね、日向には絶対に負けないよ!」


「新はモンハンもうまいもんな。よっしゃ、勝負じゃ新!」


「うん、ボコボコにするよ……ってありゃりゃ? ありゃ?」


「ん、どうした新?」


「何かわかんないけど指から血が出てきた。かさぶた取れたのかな」


「……にしては出血量やばいけど。はい、とりあえず絆創膏」


「うん、ありがと……ふふっ、もう両手ともフランケンシュタインだ!」


「……ゲーセンってそんな怪我する場所じゃないんだけどな」

 格ゲーをすればなぜかその前に指から大量出血して……でその後の対戦では案の定ボコボコにされて。

 第2ラウンドって言って新は必殺技禁止のハンデ付きでも結構ボコボコにされて。

 とんでもないコンボの嵐でボコボコにされて。


「……なんでそんなに強いんですか、新さん?」


「ふふっ、それはヒミツ……強いて言うなら生け花、かな?」


「絶対関係ないでしょ、それ。でも完敗です、負けました! この後レースゲームで勝負だ、俺あれは強いから!」


「いえーい、僕の勝ち! いいよ、受けて立つよ!」

 そんな感じで何故か傷だらけの新とゲームセンターで楽しく遊んだ。

 やっぱり男同士でこうやって遊ぶのも最高だな!


 ⋯⋯え、レースゲームの勝敗?

 ⋯⋯聞かないでください。


「ふふ~ん、今日は僕が日向に完全勝利だね! この後の夜ご飯、僕の行きたいお店に付き合ってもらうよ!」

 取りあえず新が勝ち誇った表情をしていたことだけはお伝えします。




「わーたしさくらんぼー!」


「もう一回! ……ふふっ、相変わらず歌が上手だね、亜理紗は! また今度、とみーちゃんとかあやのんとか真夏とかと一緒に行こうね!」


「ありがと、真衣! 私もそのメンツと行きたい、難しいかもだけど……それより次は真衣が歌う番だよ!」


「そうだね、何歌おっかな……それより亜理紗、今日ちゃんと楽しんでる?」


「……え、何で?」


「いや、ちょっと表情の奥にそう言う色が見えたんだけど……私の考えすぎ?」


「うん、考えすぎだよ、だって私今めっちゃ楽しいもん! だから真衣、もう一曲お願いします!」


「まあ、それならOKです! それじゃあリクエストにもあったようにチョコミント歌いまーす……あ、そうだ亜理紗、この後はスイーツの美味しいお店に行くからね! そこで夜ご飯と一緒に甘い物も摂取しちゃいましょう!」


「うん、そうしよう! 甘い物大好き、楽しみ楽しみ!!!」

 


 ★★★

 ゲーセンの怪我は全部僕がしたことです。

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