第5話 月も綺麗だね
「もう照れてるくせに! 誤魔化してちょっと可愛いかも……ふふっ、やっぱり鮫島のそういう所私は好きだよ」
「だから照……え?」
「鮫島のそう言う照れ隠しするのも可愛いし、好きだよって。他にも困ってたら助けてくれる優しいところとか、頼りになるところとか楽しいところとか……鮫島のそういところ、好きだよって。ふふっ、月もキレイだね、鮫島」
優しい顔で俺の方を見つめながら。
月と星に照らされたその輪郭が、少し紅潮した顔がよりきれいに見えて。
「……ほほほ、本気にしちゃうぞ? そんなこと言ってからかってるつもりかもだけど、そんなこと言われたら本気にしちゃうかもだぞ! 俺だって柊木の友達だけど男だかんな! いつも言ってるけど、俺ちゃんと男なんだぞ!」
「ふふっ、どうかなぁ? ふふっ⋯⋯どうだと思う、鮫島? 私はこの月、すごくキレイだと思うけど」
おどけたようにそう笑って再び星に目をやる。
……これは本気にしていいよな。
というか本気にしなきゃダメだよな、一緒に住むことになる前にはっきりしておきたい気持ちもあったし。
だからその、柊木にちゃんと……気持ち伝えたい。
俺の気持ち、柊木にちゃんと伝えたい。ちゃんと大好きって伝えたい。
「あ、あのさ、ひい「鮫島、ここからはちょっと本気で聞いてほしい話。ちょっとだけ本気で聞いてほしい話があるけど良いかな?」
「あ、お、うん。OKOK,聞く聞く!」
俺の声を遮った柊木の言葉に少し気持ちを足踏みする。
この話の後でいい、これ聞いてからでも間に合うはず。
「ありがと。それで話ってのはね、明日お母さんに報告に行くんだ。鮫島の家に住むって報告と了承、貰いに行くの。それに鮫島もついて来て欲しいな、って」
「あっ、そう言う話か! う、うん⋯⋯俺はいいの?」
確かに、親に報告するのは大事!
でもそれ、俺がついていっていいのかな?
「うん、むしろついて来て。鮫島にも来て欲しい、この人の家にお世話になる、って言わなきゃだし……鮫島とお母さん、仲いいし平気でしょ? 多分、お父さんになる人はいないから。緊張しなくて大丈夫、いつも通りで、ね?」
「⋯⋯それならいいよ。わかった、ついてくよ。そう言う事なら一緒に行く、一緒に行くよ! 久しぶりの柊木の家、俺もついて行かせてください」
「約束だよ、明日の放課後、絶対に行くからね……それで鮫島私に何か話? なんか言おうとしてたよね、さっき?」
「え、あ……いや、何でもない。星も月もキレイだな、って」
……ちょっと話していて気分が落ち着いちゃったし。
それに告白するのは明日の方が良い気がしてきた。
柊木のお母さんと色々話して、それから告白する方が良いと思ったから。だからちょっと、時間をずらそうと思う。
「何それ、さっき散々いってたじゃん、私も……くしゅん」
俺の答えに呆れたように笑った柊木が可愛いくしゃみを一つ。
風呂上がりに外にいたから湯冷めしたんだな、そろそろ中入らないと。
「待ってよ、鮫島。もう少し話そうよ」
「いや、でもくしゃみ出てたし。湯冷めして風邪ひいたら大変だし」
「むー、そうだけど……あ、そうだ! それじゃあ鮫島の部屋で話そ、これならいいでしょ!」
「⋯⋯別にいいけど見つかったら母さんに怒られるかも。前も怒られてたでしょ、それで」
「良いじゃん、私は怒られないんだし! という事で決定、中に入るよ!」
ぐいぐいと俺の背中を押して部屋の中に押し入れる。
怒られたくないけど……いや、怒んないかこんなことで。
「という事で鮫島の部屋……ふむふむ、相変わらず小物がいっぱいある! 自作だよね? 前私に手袋くれたし!」
「まあ、手芸部だしね。全部自作だよ、全部!」
「すごいね、鮫島は! 私裁縫は出来ないからさ……どーん!」
そう謎の効果音を出してベッドに寝っ転がる……おいおいおい!
「ちょいちょい、それ俺のベッドなんだけど! 俺のなんだけど! いつもみたいにあのクッション座れよ!」
「良いじゃん、もう家族なるんだから! ふふっ、ふかふかで落ち着くね、鮫島のベッド! 鮫島のベッド、私がいつも寝てるお姉さんのよりふかふかな気がする」
シーツに包まって上目づかいの蕩けた顔で……破壊力半端なさすぎ! そんな顔するなよ、俺のベッドで⋯⋯可愛いかよ、爆発かよ!
「……か、母さんに怒られても知らないぞ! 前も怒られたし!」
「私は怒られないし~? おばさん、私には優しいし⋯⋯という事でここで続きの話、しよ? いっぱいお話しようよ、鮫島」
「……全くもう、柊木はもう!」
「良いじゃん、これから一緒に住むんだから! だからね、これくらい⋯⋯これくらいいいでしょ?」
「⋯⋯もう、柊木は⋯⋯はぁ」
満面の笑みでシーツに包まり直す柊木に少しだけため息が出る。
柊木が包まったらいい匂いとかしそうだし……寝れなくなったらどうすんだよ!
~~~
「⋯⋯ふひー、なんか疲れた」
あの後柊木と少し話して、やっぱり母さんに見つかって少し怒られて。
そのことでくすくす楽しそうに笑っていた柊木は「おやすみ、また明日」と一言言って自室に戻って言った。
「……やっぱりいい匂い。同じシャンプーだよな、本当に……?」
ベッドに寝転がるとやっぱり柊木のいい匂いがして、それに一つ屋根の下に寝ているという事実も重なって。
悶々としながらなかなか寝付けない夜を過ごしてしまった。
~~~
「おやすみ、また明日」
そう言って私は、鮫島の部屋を出て、自分の部屋……正確には鮫島のお姉さんの美月さんの部屋なんだけど、いつも私が使ってる部屋に戻る。
―ふふっ、少しおばさんに怒られちゃったけど、やっぱり日向と話すの楽しかったな、日向と一緒、すごく楽しくて……えへへ、これからの生活もすごく楽しみ。
―これから日向と毎日一緒で、毎日同じ屋根の下で……
「……んっ……はぁはぁ……日向、日向……んんっ」
―どうしよう、胸の高まりが抑えられる気がしない。
―さっきまでそう言う事あんまり考えないように、というか意識しないようにして日向と話してたけど、でもいざ意識すると……やばい、ドキドキが止まらない。これからずっと一緒で、生活も……ドキドキと高鳴りとふわふわが止まらない。
「はぁはぁ……日向、ひなたぁ……ひなたぁ……」
―心臓が高鳴って、身体が熱くなって、胸とか下半身がきゅんきゅんして、身体が日向の事求めてるみたいに……やばい、止まらない、身体が止まらない。
―どうしよう、これまずいよ……大好きな人と、一つ屋根の下で生活で、私……このままじゃ、おばかになっちゃう。
「あんっ、日向……日向、ひなたぁ……くちゅ……」
―日向の事しか考えられなくて、日向を四六時中求めて……そんなえっちな女の子になっちゃう。
☆
「んんっ……ん?」
なんか身体が重い、何かが上に乗ってるみたい……も、もしかして座敷童てきなやつ?
それなら怖いけど嫌でも目に入る光的に多分朝だし……
「……え、ひ、柊木? 何してんの?」
「んふふふっ、さめ⋯⋯鮫島!? おおお起きてたの?」
意を決して目を開くと俺の身体の上に押し倒すように柊木がまたがっていた……え?
★★★
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