第16話 生徒総会の壇上でつかみ合いの喧嘩 生徒会長が停学
翌日は生徒総会が行われた。
生徒総会へは生徒会からの提案という形で行われる。壇上でイサクが議案を読み上げるが、頭に血が上った状態の生徒会長イサクの前に『制服自由化』との文字が目に入った。イサクは普段から、制服自由化なんて、朝タクシー乗って登校し、昼の授業を寝て過ごし、夕方ボーリングに出かけるふざけたランブリ生には時期尚早であると考えていた。その日のイサクはもはや歯止めが利かなくなっていた。
イサクは議案の読み上げを途中で打ち切り、壇上のマイクを通じて全校生徒に向けて一方的な苦言を述べ始めた。
「こんな身勝手な議案、通るわけがない。この議案が通る可能性は100%ない」
事情のわからない生徒たちは、何かの切れギャグ何かと勘違いして爆笑した。
これに対し質疑応答で壇上に上がったのはクリケット部員たちであった。石黒は思った。公の場でイサクを追い込むチャンスだ。石黒がマイクを握った。
「1%でも可能性があれば挑戦するのが男だろ」
「100%不可能だと言ったんだろ。だから残りは1%ではない。残された可能性は0%だ!!!」
「なんだと!!この偽善野郎が!!!」
石黒とイサクはそのまま壇上でつかみ合いになる事態に。体育教師の大城が飛び出して、二人の間に割って入った。
「やめろ!!!やめろ!!!」
二人はそのまま体育教官室に連行された。
「喧嘩両成敗だ!!!このドアホどもが!!!」
生徒総会で生徒会長が生徒と小競り合いし、停学処分。前代未聞の出来事であった。
試験前になると自費でノートコピーを配ってしまう自虐キャラの瀬戸ノエルを、ラグビーで鍛えた屈強な肉体で守っていた戸川イサクは停学となってしまったのだった。
期末まで1週間。部室一斉清掃の日がやってきた。その日は部活を休止。部室の奥で地層と化したゴミを掘り起こしたりして、できるだけきれいな状態にするのである。
フィールド脇の部室ではクリケット部は全員で掃除を行っていた。キャプテン石黒の姿はなかった。停学中だったからだ。鳩山は石黒のヘルメットを鳩山が手にとっていた。
「あーら、石黒さんのヘルメット。なんだか汚れてるぅ」
鳩山は、石黒のヘルメットに自分の吐息をたっぷりと吐きかけて、布でゴシゴシと拭き始めていた。
1年の田中と鈴木は背後から緊張気味にその様子を見守っていた。
「なあ最近、鳩山さんのしゃべり方って、なんかおかしくない?なんて言うか、こんなにオネエっぽかったっけ?」
「ああ、なんか、文化祭のあたりからだよね。ちょっと変だよね」
フィールド上では織部がクリケットバットでボールを高いフライを打って、自分で捕球する練習を行っていた。何度か捕球した後、織部が部室付近に戻ってきた。
「あれ、ここらへんに石黒のクリケットバットがあったはずなんだけど、どこいったっけ?あれ、ひびが入ってたから捨てる予定だったんだけど」
1年は二人とも首をかしげた。
「すいません。ちょっとわからないです」
「石黒の話だと、ケースのポケットにサブ携帯が入ってるらしいからケースだけは捨てるなよ」
「GPSとかで調べたほうが早くないですか?」
「たしかに、それもそうだな。本人に連絡しておくか」
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