あとがき
「我が祈りが瑛峰学院に届きますように」をご愛読いただきありがとうございました。
この作品はキリスト教の背景知識がないと、少しわかりにくかったのではないかと思いますので補足説明をします。
まず、主人公の「ノエル」。これは、フランス語でクリスマスという意味です。クリスマスとはキリストの誕生日のことなので、主人公瀬戸ノエルの立ち位置はキリストであることを示唆しています。物語の中でノエルがクリケット部員たちに絡まれたり、美術部の友人にボコボコにされたり、視力を失いかけたりするのは「受難」です。そこから奇跡的に視力を取り戻すシーンを「復活」として表現しています。
ラストシーンでは、ノエルにシューベルト作曲のアヴェ・マリアを独唱させていますが、これには作者の意図が強く反映されていて、どうしてもアヴェ・マリアを歌うシーンが入れたくて、そのために無理やりタイムスリップさせてシューベルトに歌唱を習いに行かせています。ここは自分でも強引な展開だと思っています。
タイトルの「我が祈りが瑛峰学院に届きますように」はアヴェ・マリアの歌詞の一節(Soll mein Gebet zu dir hinwehen. わが祈りがあなた様のもとへと届きますように)をモチーフにしています。
次に、「イサク」ですが、実は、イサクは旧約聖書に出てくるアブラハムの息子の名前です。深い意味はなく、旧約聖書の登場人物の中でなぜか日本人風な名前の人物がいましたので登場人物の名前としました。
さて、その「イサク」ですが、生徒会長として物語を通じて大活躍してくれますが、最後のシーン、女子校との交流会では、なぜかやる気がありません。待合室ではスマホをいじり、礼拝堂入場では先頭ですらありません。彼は女子校との交流会のために生徒会長に立候補したと言っていましたが、それはただの偽装工作で、本当はラグビー部が守りたいだけだったのです。そのラグビー部を失ったことで、気の抜けた状態になってしまったのです。
油谷ミケは、ミケランジェロのミケ。レオはレオナルドダヴィンチのレオです。ミケは三毛猫風な名前であり、レオはライオンっぽい感じがします。ミケとレオの格の違いを示しています。
そもそも、なんで、油谷とかいう名字なんでしょうか?そりゃあ、油絵を描いているから油谷なんでしょうと思われた方、非常におしいです。本当の意味は「油を注がれた者=メシア=救世主」であることを意味しています。何の救世主かというと瑛峰学院に対する救世主です。これは多額の寄付金を供給しているから救世主なのです。
クリケット部員たちは、ノアの箱舟が由来です。ノアの箱舟の話で地上から水が引いた時、陸地の探索のためにカラスと鳩が放たれました。カラスは戻ってこず、鳩はオリーブを加えて戻ってきました。石黒九郎は、九郎=クロウ=カラスです。織部はオリーブ、鳩山は、そのまま鳩です。
物語中に出てくる瑛峰学院の学校の課題は、中世ヨーロッパの宗教改革を題材とした小論文であり、古文であり、音楽です。受験では役に立たない科目ばかりです。それは、学生たちが真の実力をつけて、大学受験をして、学院から出ていかれると本当は困るというのが学院の意図です。
また、物語を通じて、寄付金に関するシーンが異常な頻度で出てきます。そのたびに「グルテン金貨が箱の中でチャリンと音を立てるやいなや、学校関係者の魂は天国に飛びあがるのだった」との文言が出てきます。むろん、意図的に入れています。寄付金の存在が高校生をいびつな行動に走らせ、関係者の運命を狂わせていることを示唆しています。では、どうすれば、登場人物の全員が幸せになれたでしょうか?
ふふ。
この話はフィクションなので、何とも言えませんね。
どうか、この祈りが瑛峰学院にとどきますように。
この祈りが瑛峰学院に届きますように 乙島 倫 @nkjmxp
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