『レゴリスに恋して』を更新しました。第73話&74話です。
第73話 吉備野がはまる沼
https://kakuyomu.jp/works/16818622174545824282/episodes/2912051603089290996
第74話 寄せ書きの帰る場所
https://kakuyomu.jp/works/16818622174545824282/episodes/2912051603509550544
第72話では、月面生命体ルビットたちが未来トラベル社のネットワークに侵入し、技術資料を勝手に書き換えます。その結果、約1か月後に予定されていた審査会が、わずか3日後に繰り上げられるという異常事態に。人類の知らぬところで、月面から静かに技術革新が加速していく――そんな不穏な幕開けです。
第73話では、剣木・吉備野・碓原の3名が登場。
安全体操をしたかと思えば、上司の目を盗んで動画を見たり、忘れ物を取りに行ったりと、職場はどこかのんびりした空気に包まれています。
彼らがまだ審査会の繰り上げを知らないため、緊張感のない日常が描かれます。
しかし、剣木が午前中のオンライン会議を終えるころには、急な日程変更の知らせに焦りの色を浮かべることになるでしょう。
嵐の前の静けさ――そんな一話です。
第74話では、復興局の官僚・思兼が民宿「たちばな」を訪れ、杏仁豆腐を注文します。この穏やかな昼下がりの場面で、思兼と拓海の間に「伊吹の絵」をめぐる静かな対話が生まれます。
父島に連れて来られた当初、伊吹の絵は同じ色ばかりを使い、形も崩れていました。しかし、時間とともに筆致は整い、色彩は穏やかに――まるで心の回復を映すように変化していきます。
彼女は「見る」ではなく「描く」ことで、自分の内面を整理し、過去の痛みや不安を少しずつ昇華していたのです。それは、アートセラピーのように、絵を通して心が再生していく過程でした。
そして、思兼がわざわざ訪れた理由は別にあります。色紙と手紙を渡すためです。
それは、小学生の時、病気でクラスを離れた伊吹を励ますため、かつてクラスメートたちが準備されていたものでした。しかし、その色紙が見つかった場所は――倒壊した小学校の瓦礫の中。つまり、寄せ書きを書いた子どもたちは震災の犠牲となったことが示唆されています。
伊吹の絵が「心の再生」を描く一方で、色紙は「失われた記憶の帰還」を象徴する。この対比が、第74話の静かな悲しみを深く刻みます。
挿絵はCopilotに作ってもらいました。