第8話 古文がなんで週に四コマ? ホームルームではタクシー乗るなと連絡あり
ある日、日下の授業のあと、学級内は騒然としていた。日下が来週、テストだと言い始めたからである。日下のテストは半端ない。クラス平均が20点とかになる難易度だからである。日下の試験の難易度が高かろうが、推薦基準が変わるわけではない。他の古文の教師の場合で平均点が60点とか80点とかで、教師間で平均点に大差がついても何の補正も行われない。
そもそも、古文のコマ数が2年生は4コマもある。毎日のように古文という意味不明な状況で、比重が大きいのである。焦った生徒から質問が飛び交った。
「先生、どの問題がでるんですか?」
「テスト範囲の中から出ます」
「先生、そのテスト範囲はどこなんですか?」
「三週間前には知らせたと思います」
「先生、三週間前は休講だったと思います」
「ああ、そうだったか。伝わってなかったのか」
日下は伝達ミスに気付いた。だからといってテストの日程自体は変更しなかった。別のクラスには連絡してあったからだ。そもそも、日下の授業は異様なのである。何と古文の先生のくせに板書がなく、口頭での説明だけなのである。
しかし、要領のいい連中は、こういったテストの乗り切り方を知っている。『親友』の存在である。
その日の夕方、ホームルームが始まる前の休み時間では、ノエルの周辺では、古文のノートコピーを受け取る生徒で人だかりができていた。
「ノエル、サンキュー」
「漢字間違えちゃだめだよ」
クリケット部の織部は答えた。
「ああ、納言はだいじょうぶだ。清水小学校の納言」
ちなみに、清水小学校は、織部の出身小学校であるが、何かの勘違いをしていることに当人は気付いていなかった。
一通りノエルの取り巻きがいなくなったところでイサクが声を掛けた。
「こんなことしなくていいって。やりすぎだよ」
「え、そうかな。みんなでちゃんといい点とれば、日下先生も喜ぶと思うよ」
「コピー代を自分で払ってまでみんなにコピーを配る必要なんてないって!」
「あ、確かに・・・。」
しかし、ノエルは少し考えこんだ。
「でも、みんなはタクシー代が必要みたいだけど、僕はタクシー乗らないから問題はなさそうだ・・・」
イサクは、この天然発言を聞いて、『もういいや』という顔になった。
ホームルームにてクラス担任教師の野原から朝の通学について注意があった。
「みなさん、緊急時以外はタクシーを使わないでください。他の利用者に迷惑です」
すかさず生徒からヤジが飛んだ。
「なんで、タクシーだめなの?お金払ってれば、お客さんだっつーの」
生徒たちは爆笑した。そもそも、教師に対してタメ口である。しかし、ホームルームの教師は気にする様子はなく、淡々と連絡を続ける。
「バスのボンネットにつかまらないでください」
「誰かボンネットに乗ったやついるんだ!」
生徒たちは再び爆笑した。
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