第10話 セントランブリフェスティバル(SLF)
約半年前の事だった。ノエルは正門玄関の宗教画の前で手を合わせていた。そこを通りかかった男子生徒がノエルに声を掛けた。
「おい、何やってんだ。おかしいだろ」
「ああ、そうだった。手を合わせるのは仏教だったね」
ノエルに声をかけたのは油谷ミケであった。
「ちがう、ちがう、これはただの絵だ。神様なんかここにはいない」
「そんなこと言うなよ。君の父の絵じゃないか」
「だからこそ、言ってるんじゃないか。父の絵の前で頭下げたりされたら、息子はどう思うか?嫌に決まってるだろ」
ミケの意に反してノエルはにこりとした。
「おい、体育館に行くぞ」
体育館では全校集会が開かれるところであった。
体育館に入ると壇上では何人かの生徒がパイプ椅子に座って待機していた。生徒会長の立候補者たちだった。
「あ、イサクだ」
「イサクが生徒会長に立候補するらしいぞ」
ミケの渡米前。生徒会長選挙が行われ、女子校との交流会について熱く語ったイサクは生徒会長に当選した。
古文小テストのあと、立て続けに中間テストが行われた。学校関係者が成績処理をする中、文化祭となった。
瑛峰学院高校の文化祭は通称『セントランブリフェスティバル(SLF)』と呼ばれている。セントランブリとは何なのか?上智大学がソフィア、立教大学がセントポールズと英語名があるように、瑛峰学院も英語表記の別名を持っている。『セントランブリ』とは瑛峰学院の別名の事なのである。
GMARCHE付属校の瑛峰学院はそこそこの知名度であるが、駅から遠いので、来訪者は思ったほど多くはない。
夕方ごろになると、メインステージでは『ミスランブリコンテスト』が行われようとしていた。
その会場にいたノエルは思った。はて、男子校なのに、ミスコンテストとは一体どういうことなのか?来場者の女子高生でも出すんだろうか?それとも姉妹校の人が呼ばれていてコンテストに参加するんだろうか?
ステージ上の司会進行役の古田は、学園祭実行委員が募った有志である。司会の古田が出場者を招き入れると、そこに現れたのは女装した姿の鳩山であった。
オカマ声で挨拶する鳩山に会場はどよめいた。
「こんにちわー。パト山です!二年生です。部活わー、クリケットやってます!よろしくお願いします!」
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