2-2
どこをどう、どのくらい歩いたか分からないが、気付くとオアは都会にいた。
ビルの間を人々と車が行き交い、遠くには高い塔が見える。交差点の向こうに立つ商業ビルに設置されたディスプレイには、広告が流れていた。
オアはそれをぼんやりと眺める。これから自分はどうすべきか、未だ判断できずにいた。
サイバーセキュリティの広告を見て、オアははっとする。家族の情報を削除すべきではないかと思ったのだ。
家族のデータは、れっきとした個人情報だ。もし自分がウイルスに感染したり、ハッキングされたりしたら、流出する可能性もある。
オアはさっそく回路を動かした。家族の情報を探し出し、表示してメニューに移る。
ふと、春翔の笑顔が人工知能上に浮上してきた。勇樹、恵莉、裕一の顔、生体情報、初めて会った時の映像……。
消せなかった。メニューまで開いたのに、どうしても「削除」を選択できなかった。
それが何を意味するのか、オアには分からなかった。
「臨時ニュースです」
広告の画面が切り替わり、無機質な背景にニュースキャスターが映る。
「ヒューマノイドが、人間を拉致監禁していた事が発覚しました」
近くを歩いていた人間達は足を止め、ニュースに見入る。みな不安げな表情を浮かべ、画面を見上げている。
「昨日、葛並区の空き家で、ヒューマノイドが女性に危害を加える様子が、目撃されました。警察が調べたところ……」
人々がざわつく。ヒューマノイドは、ロボットの一種である以上、人間に服従するものだと、世界では信じられていた。
画面が切り替わり、オアそっくりの顔が大きく表示される。
「女性を拉致監禁していたのは、オアINT102型のヒューマノイドで……」
画面に映ったのは、オア自身と同じ型で、二世代前のヒューマノイドだ。
(これは、自分にとって良くない事になる)
オアはそう感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます