2-1

 目を開けるとカラスがいた。

 オアは、状況を把握しようと起き上がる。

 目の前のカラスが、突然動いたオアに驚き飛んでいった。

 この場所には見覚えがある。いつも自分が、家族のごみをまとめて捨てに来ていた所だ。 

 目の前で山になっているごみ袋達を見て、オアは目を伏せる。自分は家族に捨てられたのだと、認識した。

「……」

 人間に捨てられたヒューマノイドは、どう行動するべきか。

 人工知能を回転させても、自分の中にその答えが見つからない。インターネットに繋いで検索してみたが、出てくるのは人間向けの情報ばかり。

 自分の中にデータとして登録されている取扱説明書を参照してみたが、やはり書いてあるのは持ち主、すなわち人間のためのマニュアルだけだった。

 開いた情報を閉じ、オアは立ち尽くした。自分がこれからどう行動するべきか、全く判断できなかった。

 とりあえず家族には捨てられたのだから、あの家に戻っても歓迎はされないだろう。人間の意向は優先されるべきであるし、家族の元に戻ってはいけない。

 ならば家族の選択通り、ここで捨てられているべきか。

 しかし、ごみは処分されるものだ。それはヒューマノイドも例外ではないだろう。データは消去され、ボディは解体されて、部品ごとにリサイクルや処分に回される。

 つまり、自分は死ぬ。

 それは嫌だった。

 オアは、家とは反対方向に歩いて行く。

 こうして彼の放浪生活が始まった。

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