1-4

 帰宅した両親が見たのは、バットを片手に立ち尽くす勇樹と、泣きじゃくる春翔、そして床に倒れ全く動かないオアだった。

「何があったのか、説明しなさい」

 すぐさま家族会議が開かれた。両親は子ども達を前にして、険しい表情をしている。

 子ども二人は何も言わない。

「勇樹! 春翔!」

 痺れを切らし、母がその名を呼んだ。

「……ごめんなさい……」

 春樹が泣き腫らした目でぼそっと言う。

「どうして、こんな事したの?」

 母に責められ、春翔はまた目に涙をためる。

「オアがいなくなれば、またお母さんとたくさん話せるかなって……」

 驚いたのは両親だ。子どもがそんな事を考えているなんて、思ってもみなかった。

「父さんも母さんも、俺たちの事はオアに任せればいいと思ってたんだろ」

 勇樹が両親を責める。

「機械に相手させておけば、子どもは満足するだろって、そう思ってたんだろ?」

 父母を委縮させる程に、勇樹の眼は鋭い。

「違うの、お母さん達は、二人が寂しくないようにって思って……」

「こんな機械が、親の代わりになるとでも?」

「……ごめんね……」

 沈黙が訪れた。重い空気の中、春翔の嗚咽だけが響く。

「……捨てようか」

 父が沈黙を破った。家族は顔を上げ、裕一を見る。

「オアを捨てよう。父さんと母さんが、悪かったよ」

 

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