3-1

 目を開けると誰かがいた。

 オアは身体を起こし、その人物を見る。

「お。起きたか」

 オアの傍にいたのは、人間だった。

「お前さん、ヒューマノイドなんだな。びっくりしたよ」

 読んでいた本を閉じ、その人間はオアを見る。

「私の名前は、天宮梁あまみやりょうだ。お前さんは?」

 オアは名乗るのをためらう。自分がオア型だと知れたら、また暴力を振るわれるかもしれない。

「何だ、旧式のヒューマノイドは名乗れないのか?」

「いいえ、そんな事はありませんが……」

「じゃあ名乗れ。恩人には自ら名乗っても良いもんだぞ」

 人間に命令されては、従うしかない。

「自分は、オアINT104です。製造番号は、164302になります。オアとお呼びください」

「へぇ、あのオア型か」

 梁は、じろじろオアを見る。

「我ながら、面白い物を拾ったもんだ」

「拾った?」

「いや、ぶつかられた時にはムカついたが、目の前で倒れたもんだから驚いたぜ」

 そう言いながら、梁はオアの観察をやめない。

「Type-Fのアダプターなんか、今時なかなか手に入らないからな。充電するのに苦労したよ」

 どうやら、この人がオアを充電してくれたようだ。

「ありがとうございます」

 オア少し戸惑いながら礼を言う。人間に迫害された事こそあれど、メンテナンスされたのは初めてだった。

「おう」

 梁は答える。

「世間はまだ、あの事件を忘れちゃいない。しばらくこの家にいるといい」

「お邪魔ではありませんか」

「そうさなー。私は仕事で忙しいし、代わりに家事でもしてくれると助かるが。頼めるか?」

「承知いたしました」

 こうして、オアは人間に拾われた。家事をするよう言われた事もあり、しばらくはこの家にいるのだろうと判断した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る