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 両親からオアに命じられた仕事は、家事と子ども達の相手だった。仕事が忙しい二人に代わり、この家の生活を回し、子ども達と一緒に遊ぶ事。

 オアは、その命令の通りに動いた。

 家族が起きる時間には朝ごはんを作り終え、出掛ける家族を見送る。洗濯をし、家の掃除をし、登録されたクレジットカード情報を元に買い物をする。兄弟の弟、春翔を幼稚園へ迎えに行き、兄の勇樹が帰って来ると、その相手をした。

「ねぇオア、この絵本読んで」

「承知いたしました」

 春翔はすぐオアに懐き、絵本やおもちゃを彼の元に持ってきては、一緒に遊べとせがんでいた。

 一方、勇樹はオアを警戒して近付かないものの、使い方はよく心得ていた。

「この計算式の答えを教えろ」

 学校の宿題を持ってきては、彼に解くよう指示するのだ。

「はい。答えはx=2yです」

「こっちの国語は?」

「……申し訳ありません。文章から、主人公の感情を読み取る事ができません」

「ちっ。何だよ、このポンコツ」

 そして両親が仕事から帰って来ると、一家団欒の時間だ。

「春翔、今日は幼稚園で何をしたの?」

 夕飯時に母親が訊くと、春翔は喜んで話し出す。

「あのね、たっくんと電車で遊んで、泥団子作って、運動会の練習した!」

「そうなの。よかったわねぇ」

「お、もう運動会の季節か」

「うん! お父さん、お母さん、絶対来てね」

「ああ、行くよ」

「お弁当、作らなきゃね」

 家族の会話を聞きながら、オアは鍋を洗う。

「勇樹は? 学校、どうだった?」

「別に、普通」

「あら、そう。困った事とかあったら、お母さんに言うのよ」

「分かってるよ」

 夕食が終わると、オアはその後片付けをし、家族が寝静まると自分もスリープモードに入る。

 そんな一日が続いて一週間になり、一か月になり、一年になった。オアは淡々と家事をこなし、家族の生活は安定した。

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