5-4

 研究室から、爆音がする。

 その苦情を受け、アヌは急いで自分の研究室へ向かった。

「うるさいね」

 研究棟全体に響くような音楽が、彼女の研究室から溢れていた。

「何してるね!」

 扉を開けると、オアが床にうずくまっていた。そのスピーカーから、ロックな音楽が大音量で流れている。

「オア! 曲を止めなさい!」

 そう命令すると、音楽はぴたっと止まった。

「何があったね?」

 落ち込むヒューマノイドの傍に座り、アヌは優しく声をかける。

「オア、どうしたね?」

「……自分は欠陥品です」

 オアは、か細い声で言った。

「なぜ、自分が図書館に入ってはいけないのか分かりません。外で待っていろという指示にも、従えませんでした」

 自分が寿命を迎えるまで、残り二カ月をきっている。このまま、結歌と話もできずに死んでいくのだろうかとさえ、思ってしまう。

「こんなに『苦しい』思いをするなら、ココロなんて要りませんでした」

「そうかね」

 アヌは優しくオアの髪を撫でる。

「でもねオア、それも『生きる』って事なんだね」

「……『苦しい』です。すごく『苦しい』……」

「うん、そうだね」

 窓の外で、夕方五時の鐘が鳴る。オアの重い感情を包み込んで、世界は夜に向かっていた。

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2024年11月24日 16:00
2024年11月27日 16:00

オアINT104 橘 泉弥 @bluespring

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