5-5

 数日後、オアと結歌は向かい合って座っていた。学生食堂の片隅で、二人は静かにお互いを見る。

「ごめんなさい、オア」

 先に口火を切ったのは結歌だ。

「貴方が納得する説明を、ちゃんとするべきだったわ」

「こちらこそ。すみませんでした」

 オアも続けて謝罪する。

「少し、しつこく聞き過ぎました」

 結歌が微笑する。

「お互い様って事みたいね」

「そうですね」

 オアも微笑んだ。

「ねえ、オア」

 結歌が真面目な顔になる。

「私と一緒に、したい事はある?」

「したい事、ですか?」

「ええ。あなたに残された時間は、もう多くはないでしょう。私と一緒にいたいって言ってくれたけど、私と一緒に何がしたいの?」

「……」

 オアは黙り込む。確かに、結歌と一緒にいたいとは思うが、それ以上の事を考えてはいなかった。

「自分は、結歌さんが傍にいるだけで満足です。特段、何かしたい訳ではないようにも思います」

「そうなのね」

「でも、一つだけ。わがままを言っても良いでしょうか」

「なあに?」

 結歌の真剣なまなざしに、オアは少したじろぐ。

「私にできる事なら、何でもするわ」

「……自分が『死』を迎える時、傍にいてほしいです」

 自分にも、傍にいてくれる人がいると、自分を受け入れ、大切にしてくれる人がいるのだと、実感したい。それがオアの願いだった。

「分かったわ」

 結歌はうなずく。

「あなたが動かなくなるその時、私は必ず傍にいるわ。約束しましょう」

「ありがとうございます」

 彼女の迷いのない肯定が、オアには「嬉し」かった。

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