5-3

 二人は、大学内でも逢瀬を重ねる。学生食堂で食事をとる結歌と一緒にいたり、並木道を歩いたりして、時間を共にする。

 そうして過ごしていたある日、結歌が図書館に行きたいと言い出した。

「授業のレポートを書くのに、文献を探したいの」

「分かりました」

 二人で図書館まで歩くが、その入口で結歌は足を止めた。

「じゃあ、二時間後にまたここで会いましょう」

「?」

 オアはそれを疑問に思った。

「自分も図書館に入ります」

 そう言うと、結歌は首を横に振った。

「だめよ」

「なぜです?」

「なぜって、あなたにはカメラ機能が付いているでしょう。図書館には入れられないわ」

 それの何が問題なのか、オアには分からない。

「カメラ機能が付いていると、図書館には入れないのですか?」

「ええ」

「法律で決まっているのでしょうか? 自分の法律データは最新ですが、そのような文言はありません」

「法律とかじゃないわ。マナーみたいなものよ。図書館の中では、カメラ機能の付いている端末を操作しないのと一緒よ。本の中を撮影したら、著作権法に引っかかるわ」

 オアは回線のどこかに引っかかりを感じて、結歌に言い返す。

「自分は、そのような事はしません」

「分かってるわ。でも、持ち込まないのはマナーよ」

「結歌さんは、自分を信用していないのですか?」

「そういう問題じゃないのよ……」

 とにかく、と結歌は半ば強引に話を終わらせる。

「あなたを連れて図書館に入る訳にはいかないの。外で待ってて」

 そう言って、彼女は図書館に入っていった。

「……」

 オアはその場に立ち尽くす。

 自分は結歌に裏切られたのだと、そう思った。

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