5-2
オアと結歌は、時間を見つけては会うようになった。ヒューマノイドは所有者の同行なしに遠くまでは行けない事になっているので、デートはもっぱら大学の近くだったが、比較的繁華街に近い大学だったため、行き先にあまり不自由はしなかった。
「今日は、公園に行きましょうか」
「はい」
デートの行き先は、いつも結歌が決めていた。
オアが行き先を決めようとした事もあったが、それを決定するのは、彼には難しかった。
「ここ、区立公園なの」
公園のベンチに座り、結歌が言った。
「公園をショッピングモールの屋上に持ってくる形は、今では珍しくないけど、ここが最初だったらしいわ」
「そうなんですね」
二人はしばらく黙って、公園を行き来する人間やロボット達を見る。奥に見える巨大なディスプレイでは、宇宙に人工知能を飛ばす計画を紹介していた。
「ねぇ、オア」
「はい」
「手、繋いでみる?」
「承知しました」
そう言って、オアはさっと結歌の右手を掴む。
「違うわ……」
苦笑いする結歌を見て、オアは不思議がる。
「手を繋ぐとは、こういう事ではないのですか?」
「いや、間違ってはいないんだけど……」
違うのに、間違っていないと言われ、オアは少し混乱する。
それが顔に出ていたのだろう。結歌は、気にしないでと笑ってオアの手を握り返した。
「あなたの手、意外と柔らかいのね」
「はい。自分はヒューマノイドなので、外見は極力人間に似せて造られています」
「そうなのね」
オアの手を握った結歌は、嬉しそうにしている。
「自分と手を繋ぐのは、『楽しい』ですか?」
「ええ、もちろん」
「なぜです? 手と手が接触しているだけの行為に、何か意味があるのでしょうか?」
「意味ね……あるんだけど、説明は難しいわね」
また苦笑いする結歌を見て、オアは益々不思議がるのだった。
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