2-3
数日後、オアは路地の奥に身を隠していた。
人間達にとっては衝撃的なニュースの後、各地でオア型ヒューマノイドの廃棄や破壊行動が行われているらしい。ヒューマノイドは人間の生活に必要不可欠な存在のため、政府はヒューマノイド全体ではなく、オア型のみを危険と報道した。
その情報を、インターネットを通して得たオアは、なるべく人間に見付からないよう注意していた。壊されるのは嫌だったし、暴力を振るわれるのも避けたかった。
朝から晩まで路地の奥に座り、人間が来ないよう祈る。何にどう願っているのかは分からなかったが、オア自身、そう祈らずにはいられなかった。
路地裏に忘れ去られたごみ箱は、うまくオアを隠してくれた。
「なぁん」
夜、足元から声がした。
見ると、鍵尻尾の子猫がオアに向かって鳴いている。
「自分は、人間ではありませんよ」
「ふみゃあん?」
「貴方に差し上げられる餌は、持っていないのです」
「みゃー」
会話になっているようで、話は通じていないようだ。
子猫は、オアの脚に頬を擦り付ける。
オアは仕方なく、子猫を両手で抱き上げた。
その時、猫の声に気付いた人間が路地に入ってきた。三人組の若い男たちは、ずかずかと奥に進んでくる。
オアは猫を胸に抱き、ごみ箱の奥で丸まった。しかし、子猫には状況がわからない。
「ふにゃぁ」
彼の居場所を、人間達に教えてしまった。
「おい、あれオア型じゃねーか?」
男の一人が気付く。
「うお、マジか」
「やべぇ」
オアがどうすべきか考える前に、衝撃がきた。
「壊してやろーぜ」
「さんせー。人間に害なす機械は、壊して当然だよな」
「おい、立てよ」
そんな声と共に、オアのボディが二人がかりで立たされる。
子猫を庇って動かないオアに、容赦なく暴力は降ってきた。
「オア型は要らねぇんだよ!」
「壊れちまえ!」
「この害ロボットが!」
罵声と暴力は、どんどんオアを傷付けていく。逃げ出す事もできず、彼はされるがままになっていた。
「死ね!」
その声と大きな衝撃を最後に、オアの意識は途切れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます