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 数日後、オアは路地の奥に身を隠していた。

 人間達にとっては衝撃的なニュースの後、各地でオア型ヒューマノイドの廃棄や破壊行動が行われているらしい。ヒューマノイドは人間の生活に必要不可欠な存在のため、政府はヒューマノイド全体ではなく、オア型のみを危険と報道した。

 その情報を、インターネットを通して得たオアは、なるべく人間に見付からないよう注意していた。壊されるのは嫌だったし、暴力を振るわれるのも避けたかった。

 朝から晩まで路地の奥に座り、人間が来ないよう祈る。何にどう願っているのかは分からなかったが、オア自身、そう祈らずにはいられなかった。

 路地裏に忘れ去られたごみ箱は、うまくオアを隠してくれた。

「なぁん」

 夜、足元から声がした。

 見ると、鍵尻尾の子猫がオアに向かって鳴いている。

「自分は、人間ではありませんよ」

「ふみゃあん?」

「貴方に差し上げられる餌は、持っていないのです」

「みゃー」

 会話になっているようで、話は通じていないようだ。

 子猫は、オアの脚に頬を擦り付ける。

 オアは仕方なく、子猫を両手で抱き上げた。

 その時、猫の声に気付いた人間が路地に入ってきた。三人組の若い男たちは、ずかずかと奥に進んでくる。

 オアは猫を胸に抱き、ごみ箱の奥で丸まった。しかし、子猫には状況がわからない。

「ふにゃぁ」

 彼の居場所を、人間達に教えてしまった。

「おい、あれオア型じゃねーか?」

 男の一人が気付く。

「うお、マジか」

「やべぇ」

 オアがどうすべきか考える前に、衝撃がきた。

「壊してやろーぜ」

「さんせー。人間に害なす機械は、壊して当然だよな」

「おい、立てよ」

 そんな声と共に、オアのボディが二人がかりで立たされる。

 子猫を庇って動かないオアに、容赦なく暴力は降ってきた。

「オア型は要らねぇんだよ!」

「壊れちまえ!」

「この害ロボットが!」

 罵声と暴力は、どんどんオアを傷付けていく。逃げ出す事もできず、彼はされるがままになっていた。

「死ね!」

 その声と大きな衝撃を最後に、オアの意識は途切れた。

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