3-7

 ある昼下がり、梁は病院のベッドで横になっていた。枕元にはオアの姿があり、外では鳥が鳴いている。

「なぁ、オア」

 梁がオアに話しかける。

「結局、人間は死から逃れられねーんだな」

「梁さんにしては、ネガティブな事を言いますね」

「いや、科学がいくら進歩しても、自然の摂理には敵わないらしいと思っただけさ。悲観しちゃいない」

「そうですか」

 梁の命が長くない事は、オアには分かっていた。この主人がいなくなるのは「悲しい」が、かれはその感情を表現する術を持たなかった。

「梁さん」

「なんだ?」

「死は、怖いですか?」

「……いや」

 梁は否定する。

「生き物ってのは、いつか死ぬもんだ。ここまで神の領域に近付いても、人間はまだちゃんと生き物だ。私は安心したよ」

 オアの手を握り、梁はヒューマノイドの顔をまっすぐ見る。

「オア、よく見ておけ。これが『死』ってもんだ」

「……はい」

 梁は満足そうにうなずく。

 そしてそれから数日後、静かに息を引き取った。


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