3-6

 大学教授の任を退いた梁は、次の日から部屋の片付けを始めた。

「オア、私と一緒に旅に出よう。今はもう、外に出ても大丈夫だ」

 部屋を片付け、荷物をまとめ、旅の支度を整える。

「外に出るのは怖いか?」

「はい」

 オアは素直に答える。

「オア型ヒューマノイドを良く思っていない人間は、きっとまだいます。また暴力を振るわれるかもしれません」

「その時は私が守ってやるよ」

「いえ、人間に危害が及ぶのを見過ごす事はできません。三原則に反します」

「ははは、律儀だな」

 出発の朝、オアは梁に手を引かれて、外へ出ようとしていた。

「覚悟はできたか?」

「覚悟は、自分がするには難しい概念です」

「そうか」

 梁は玄関の戸を開ける。

「まあ、大丈夫さ。私を信じろ」

 白い朝日が、玄関に差し込む。

「私にとっても、お前さんにとっても、新しい一歩だ。一緒に踏み出そうぜ」

 その眩しさに、オアは目をしばたかせる。

 明るい光の中へ、彼は久しぶりに足を踏み入れた。


 梁との旅は、オアにとって驚きの連続だった。大自然に触れ、人間と交流し、様々な文化を学び、データだけでは知りえない経験をたくさんした。

 梁の言う通り、オアを敵視し暴力を振るう人間はいなかった。うなじの電源ボタンを隠せば、人間と見分けがつかない事もあり、彼の人間恐怖は少しずつ消えていった。


そして、月日が流れた。

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