魔界と魔王
「追放?」
魔王の言葉にクロスが頭に疑問符を浮かべる。
「左様。話すと長くなるのだが、現在魔界には165人の魔王――いや、私も含めると166人か……の魔王がいるのだが、これが結構な問題となっていてな?」
とここで一度クロスが疑問を呈する。
「え? 魔王ってそんないるモンなの?」
確かに魔王とは世界に一人……いてもまあ二人というイメージが強いので、クロスのこの疑問は人間としては当然といえるが――これに魔王はアゴを一撫でし。
「うむ。まあ、わかり易く言えば人間界にも王は複数いるであろう? それと同じように魔界にも複数の魔王がいるのだ。カレーの魔王、カツカレーの魔王、スープカレーの魔王、カレーうどんのシミの魔王といった感じでな」
「カ、カレーうどんの魔王じゃなくてカレーうどんのシミの魔王なんだ……?」
と、頬に冷たい物を垂らすクロスだが。
「うむ。期待していたところ申し訳ないが魔界にはカレーうどんがなくてな、だからカレーうどんのシミの魔王しかいないのだ」
「カレーうどんはないのにカレーうどんのシミの魔王はいるって理屈が合わない! ……気がするんだけど魔界たがらいいか。それで? 魔王が166人いるとどう問題なの?」
頬に人差し指を当てて小首を傾げるクロスに、魔王は両腕を組み。
「まあ、なんとなく察しがついているとは思うが、簡単に言ってしまえば権力争いだ。魔王とはただでさえ血の気と無駄な筋肉が多い連中でな。事ある毎に争いを巻き起こす。そんな連中が魔界では今現在も増え続けていて――それが問題となっているのだ」
「ま、魔王ともなると贅肉とか無駄な脂肪とかじゃなくて無駄な筋肉なんだ……」
とクロスが呟いていると、一心不乱にお茶をフーフーしていたsiriが。
「そうですね。魔界の魔王ともなるとスネ毛やヒザ毛まで筋肉で出来ている脳筋魔王が多いですから。因みに魔界で贅肉とは贅沢な筋肉の事です」
「贅沢な筋肉を略して贅肉! なんて無駄に贅沢な矛盾っ!」
と、変な驚き方をしているクロスだがsiriは続ける。
「更に因みにですが、ウチのマオーの脳ミソはスネ毛で出来ています」
「スネ毛ッ!? それは最早スネ毛じゃなくて脳毛って言うんじゃないのっ?」
「いや、言わんだろ……」
妙なところで冷静にツッコミを入れる魔王であったが、siriが一心不乱にフーフーしていたお茶は冷製のお茶である。
なので魔王は冷静なまま続ける。
「まあ、そんな訳で魔王が増え続ける問題を殺し合い以外の方法で解決しようとして
「人間界への追放と……?」
クロスの言葉に魔王が無言で頷いていると、そのタイミングで魔王のアツアツのお茶と自身がフーフーしていたお茶をすり替えたsiriが口を挟む。
「そしてその追放する魔王を決めるために作られたのが『魔王ランキング』です。500年に1度、このランキングで最下位だった者が人間界に追放される……というルールを500年前に魔王達自身が取り決めました」
「えっと……」
と言ってアゴに人差し指を当てながらクロスは虚空を眺め。
「500年前にそのルールが決められたって事は、魔王さんが初めて人間界に追放された人? それとも500年前にも1人追放されているの?」
これに魔王は静かに首を左右に振り。
「人間界に追放された魔王は私が初めてだ。まぁなんというか――魔王達にも多少の慈悲はあってな? 500年前。ルールが出来た瞬間いきなりランキング165位だった奴を追放するのは無慈悲だな……という事でこの500年の間に順位の変動を測って最終的に最下位だった奴を追放する事となった。そして今回はそれが私……健全なエ口サイ卜だったという訳だ」
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