坂道と魔王
という訳で魔王とsiriは外へと来ていた。そしてここがどこなのかと言えば――。それは良くわからない……siriが適当に選んだだけの、そこそこ人通りのある坂の下だった。
あの仏像の話の後「どうせ待つだけなので、それならば早く現場に行って
「それで? これからどうすれば良いのだ?」
行き交う人々の邪魔にならないように道の端に佇む魔王がsiriへと問いかければ、siriは魔王へとは視線をくれず、額に手を当て坂の天辺へと視線を送る。
「あとはこのまま坂の上に美女が現れるのをひたすら待ちます」
「左様か。それで――美女が現れたら?」
魔王が質問をするものの、siriは相変わらず魔王の方は見ずに両手を双眼鏡のようにして坂の天辺を眺めながら答える。
「現れたら――その美女は買い物帰りで、茶色い紙袋にフランスパンを差しています。そしてフランスパン以外の中身はオレンジです」
「ほぅ? それから?」
「するとですね、美女は坂の上で石か硬めのプリン辺りに
これに魔王は何度も頷き。
「うむ。美女が転ばなかったのは幸いだが一大事だな?」
ここでようやくsiriは魔王へと顔を向け一度頷くと。
「ですね。美女は『待ってー!』とか『誰か拾ってー!』と言いながら転がるオレンジを追いかけてきます。そこでいよいよマオーの出番です」
「な る ほ ど……そこで私が硬めのプリンを拾えば良いのだな?」
「アホかお前は」
siriの心無い一言に「ゴーン……」と口で言いながら、冷蔵庫に名前を書いてしまっておいたのに高めのプリンを勝手に食われてショックを受けているおじさんのような表情を浮かべる魔王。そこへとどめを刺すかsiriが魔王へ人差し指を突き付け。
「貴様は黙って転がってきたオレンジだけを拾っていろっ!」
これに魔王は下唇を噛み。
「グクゥ! こ、この私にオレンジを拾うだけの
「そうだ! 今日から貴様はオレンジを拾うだけの殺人マシンではなく殺人
相変わらず
……という話は置いといて。魔王も坂の上を眺めるようになり――そしてアゴを撫でつつ。
「しかしまあ狙いはわかったが。そうそう買い物帰りの美女が都合良く通るものなのか?」
これに地に片膝を着いて坂の上を眺めるsiriは。
「大丈夫です。私の調べでは1時間に2~3人は買い物帰りの美女が坂道を通るというデータが出ています」
「ほぅ? それは期待出来そうだ……と言いたいところだが、どーせ今回もよく見たらフランスパンが長めのたわしだったり、転がってくるのがオレンジじゃなくて中に1〜7個の星が描かれた、オレンジ色の7つの玉だったりするのだろう?」
実際そこが変わっていても出会いにはなんの問題もないはずだが、siriは首だけを魔王へと向け。
「その場合、追いかけてくる美女はブルマでしょうね? あ、ブルマと言っても
「ドラゴンボールのブルマじゃなくて
と魔王がsiriにツッコミを入れた瞬間だった。
「待ってーッ!! 誰か拾ってーッ!!」
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