魔王と仏像
――話は戻って人間界の魔王とsiri。
二人はこの日も美女ゲットのための無駄な努力に精を出していた。
相変わらず例の牛丼屋で作戦会議を開いている二人だが、siriは右手の人差し指を突き立てると。
「ではマオー。次の古の方法です」
「うむ。宜しく頼む」
と両腕を組み瞳を閉じて深く頷くはもちろん魔王で、siriはそのまま続ける。
「ここまで我々は失敗続きでしたが、原因は押し一辺倒だった事かと思われます」
「ほぅ? つまりどういう事だ?」
魔王の問いにsiriは人差し指を左右に振り。
「良く聞くと思いますが恋愛は『押してダメなら引いてみな』というヤツです。なのでここは敢えて積極的に美女を求めず、待ちに徹してみるというのは如何でしょうか?」
「なるほど。物欲センサーが邪魔をしていたという訳だな?」
「そう。仏像センターが邪魔をしていたという訳です」
「物欲センサーだ。誰が仏像坂46のセンターだ」
そのツッコミが正しいのかどうかは誰にもわからないが、魔王はアゴを撫でつつ虚空を眺め呟く。
「ふ~む。まあ理屈はわかった、だが具体的にはどうする? 本当に何もせずに仏像のように座して待つのみか?」
「仏像のように座して待つってBTZ48のセンターかっ!」
キレッキレのツッコミなのか判別がつかないツッコミを入れるsiriだが、魔王は即座に。
「いやBTZ48ってセンター以外もみんな座禅してるだけの48体の仏像のフィギュアじゃん! 仏像をわざわざフィギュア化する意味よっ!」
と返せば。
「いえ逆です。昔のオタクが作ったフィギュアが現代では仏像と呼ばれているのです」
「奈良や鎌倉のあの大仏ってフィギュアだったのっ! 昔のオタク偉大過ぎないっ!?」
これにsiriはウンウン頷き。
「アイドルとは日本語で偶像ですからね……SHAKA(48)も当時は歌って踊れる仏陀だったのでファンネーム『弟子』が複数おり、その
すると何故か魔王もウンウン頷き。
「なるほど。偉大なアイドルには偉大なファンが付くと……しかしSHAKA48ではなくSHAKA(48)だと、ただの48歳時の釈迦になってしまうぞ?」
もう突っ込むところはそこだけじゃないだろうと言いたくなるが、やはりそこ以外は最後まで突っ込まない魔王にsiriであった。
「いや待て、そんな話はどうでも良い。それで? 結局のところ具体的にはどうするのだ?」
魔王がようやく話を本筋に戻せば、siriも改まり。
「ええと、具体的にはですね。先程言ったようにこちらから行くのではなく、美女の方からマオーの下に来るのを待ちます。つまり蜘蛛が蜘蛛の巣で獲物が掛かるのを待つように、マオーには罠を張って頂き
「いや『蜘蛛の糸』ってそんな話じゃないだろう? というか話をまた仏像に戻すなっ!」
――結局。具体的な作戦の話は1ミリも先に進まなかった。
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