魔王ランキング5位の魔王

 それからというもの――魔王とsiriはあれやこれやと美女との出会いを試すのであったが、何一つ上手くいく事はなく無駄に1ヵ月の時が経過した。



 そしてその頃――魔界では……



 ――魔界のとあるところに、魔王ランキング5位の魔王の居城。ブロマンス城という名の城があった。

 この城の特長はなんといっても1階に脱衣所があるのに風呂場が3階にある事と、トイレは各階にあるがトイレットペーパーは玉座の間にしかないという攻略の難しさ……難攻不落の裸城はだかじろと呼ばれていた。


 その玉座の間の玉座に――不遜としか言いようがない、肘掛けに頬杖をつき両脚を組んだ天使のような魔王。顔立ちの良さやトイレットペーパーのように真っ白でトイレットペーパーのように良い匂いのする背中の6枚の翼は頭に輪がないだけで正に天使……といった感じの魔王だった。


 ――そう。そしてこの天使のような魔王こそが魔王ランキング5位。魔界四天王の一人デブエルであった。無論、名前はデブエルだが実際にはデブではないし、壊れかけのラジオのようなデブでもなかった。


 そしてそんなデブエルの前に――両腕を組み玉座を見上げるようにして立っている女性がいた。

 この女性をわかり易く一言で表せば忍者の格好をしている――しかし忍者としては二の腕、太もも、ヘソとを露出している些か派手で艶やかな格好が特長的なセクシーくのいちといった感じの女性で、一歩間違えればオンライン相撲サークルのサークルクラッシャーになり兼ねないくらい妖艶なくのいちといった感じだった。


 そんな女性が腕を組んだままデブエルを見上げつつ口を開く――といっても、この女忍者は読唇術を防ぐ用の口布をちゃんとしているので、実際に開いているところは見えないが、とにかくとして言葉を紡ぎ出す。

『で? わざわざ私を城に呼び出してなんの用だデブ?』

「ふむ。約1ヵ月ほど前の話だが、魔王ランキングで最下位だった者を人間界に追放しただろう? 確か――闇サイ卜だったか?」

『闇のエ口サイ卜だ』

 即座に訂正を入れてくるくのいちに、デブエルは眉一つ動かさず。

「そうそう。その未成年でも閲覧可能なエ口サイ卜だが、追放されたのは事実として――それとは別に人間界を征服するという使命を与えられていたのは知っているな?」

 これにくのいちは浅く頷き。

『当然だ。魔王ならば全員知っている事だ。魔王全員が携わり決めた事だからな』

「うむ。そしてこれも当然だが、譬え魔王ランキング最下位の者であったとしても、魔王の名を冠する者であれば人間界など3日もあれば征服出来るはずだ。しかしこの男は3日経っても1週間経っても連絡をよこさず、現在1ヵ月が過ぎようとしているが――その間によこしたのはフカフカの食パンだけだった」

(……食パン?)

 と声は出さずに小さく首を捻るくのいちだが。

『なるほど話は理解した。つまり私に奴の様子を見て来いという訳だな?』

 これにデブエルは両肩をヒョイと竦め。

「察しが良くて助かる。だが先に言っておくが、あくまでただの偵察だけで良い。奴への処断は君の報告を受けてから我々が下す。それとターゲットへの接触は禁止しない。接触するしないの判断は君に任せる」

『承知した。ならばもう行っても良いか?』

「どうぞお好きに……」

 とデブエルが言った時には既にくのいちは姿を消していた。

「ふむ。仕事が早くて結構……」

 デブエルは一人呟いていた。

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