siriとVtuber
すると珍しく魔王は肩を怒らせ。
「なっ、何故私では難しいのだっ! もしや魔王差別というヤツかっ!」
魔界にはそういったものが存在するのかもしれないが、魔界の事情など知りもしないクロスは首を傾げ。
「いやー無理に差別で言うんだったら魔王差別じゃなくて男女差別かな? くしゃみ助かるってカワイイVtuberの女の子がカワイイくしゃみをした時に発生する物だからさ」
と、これを聞いた魔王は片手で顔を押さえワナワナと震えだす。
「カ、カワイイくしゃみだと……? 一体どんなくしゃみなのだ……いや、落ち着け私」
魔王はここまで言うと一度大きく深呼吸をしてから。
「クロスよ。そのくしゃみとはどれくらいの威力なのだろうか? 因みにだが私がリミッターを外してくしゃみをした場合、街が一つ消し飛ぶくらいの威力なのだが――これは投げ銭はもらえるのだろうか……?」
「もらえるワケないじゃん! 寧ろ街復興のために身銭切る立場じゃん! ある意味で大金は動いてますけども!」
――と。ここまで言ったクロスの視線がsiriのところで止まる。
「あ、そうそうsiriちゃん! siriちゃんだったらカワイイから絶対もらえると思う! メイドの格好したアンドロイドとかメチャクチャVtuberっぽいし! だからsiriちゃんが『クチュンッ』とか『ヘクチッ』てくしゃみしたら『くしゃみ助かる』って投げ銭もらえるよ絶対!」
「ぐぬぬ……私を差し置いてsiriがだと?」
下唇を噛みながら恨めしそうにsiriを睨む魔王。そこに――
「イェーイ、イェーイ。マオーざまぁ。siriちゃん大勝利!」
とsiriが魔王の頬にピースをグリグリ押し当てる。
「お、おのれsiri! 貴様ロクな死に方をせんぞ!」
するとsiriは急にかしこまり。深々と頭を下げ。
「ご心配には及びません。申し訳ございませんが私の
「大勢の孫に看取られているのに孤独死……だと? という事はその大勢の孫とは全員赤の他人の孫……誰もお前に興味がないという事か」
「Yes!」
とサムズアップまでして景気良く返事をするsiriだが。
「……」
最早どこにもツッコミを入れられず、後ろ頭に汗を掻く事しか出来ないクロスだった。
「うむ。しかし今の話は中々に参考になったな? もしくしゃみ助かるを達成させる際には、siriのVtuber化も視野に入れておこう」
と魔王がアゴを撫でて感心していると、そこにコメカミに手を当てたsiriが進言する。
「マオー。その時は私の設定を変更する事をオススメします」
「設定を変更?」
「はい。魔界ネットにアクセスして調べてみたところ、Vtuberにおいてメイドやアンドロイドという設定はありふれているので、私をそのままVtuber化してもあまり注目されないのでは? ……と」
(いや、そのままVtuber化してもたぶん目立つ。……悪目立ちかもしれないけど)
とは思いつつもいろいろと確信がないため口には出さないクロス。――に、両腕を組んだ魔王は小首を捻る。
「なるほど。言われてみれば確かに……。ではどのような設定なら他のVtuberと被らないのだ?」
「歯科助手の助手という設定は如何でしょう?」
「ほぅ? 悪くない」
と満足そうに大きく頷く魔王。――にsiriは続ける。
「他には自宅警備員の自宅を警備する警備員というのはどうでしょうか?」
「それはただの他宅警備員だろう?」
「いやなんでわざわざややこしく説明するのっ! それ普通の警備員じゃん!」
(やっぱこの人達そのままVtuberになった方が絶対成功するでしょっ!)
とはやはり声に出さないクロスであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます