魔王ランキング

 ――と。

「おい! いかがわしいエ口サイ卜!」

「誰がいかがわしいエ口サイ卜だっ! 私は健全なエ口サイ卜! 安心安全のエ口サイ卜だっ!」

 いきなり横槍を入れてきたsiriに、速攻で切り返す魔王。――に、呆れて物申すはミニスカサンタ。

「うん。いやさ……なんで二人共わざわざ魔王さんの名前フルネームで連呼するの?」

「あ、いやすまない。別に他意はないのだ」

 と片手を上げて謝る魔王は、そのまま湯呑を取り一息入れるためか茶を啜るが――

「?」

 魔王はすぐに湯呑みから口を外した。

「? ? ? ?」

 湯呑を上からも下からも覗き込む魔王だが、クロスは――siriがお茶をすり替えた事を知っているのにそれを無視して……といってもニヤニヤはしてはいるが魔王に質問を続ける。


「そんでさ、興味本位で訊くんだけどその魔王ランキングっていうのはやっぱり強さで順位が決まるの? 魔王さんそれで最下位になったんでしょ?」

 魔王は急にお茶が冷めた事にいまだ納得していないか、首を捻れるだけ捻ってから湯呑をテーブルへと戻し――

「ふむ。まあ、ランキングの基準となるのは強さだけではない。さっきも言ったが魔王とは血の気と無駄な筋肉が多い連中故に、戦闘力がランキングの比重を大きく占めているのは確かだ。だが戦闘力以外にも政治力、経済力、粘着力、女子力、仮名入力、長州りょくなどの総合値で決まるのだ」

「長州りきじゃなくて長州りょくッ! 一体どんな力なのっ!?」

 クロスが声を上げていると、siriが首だけをクロスへと向け。

「長州りょくは長州小力こりょくにそっくりな力です」

「長州小力のそっくりが長州力なのっ!? ってだからどんな力っ!!」

「飛ぶぞ?」

「飛ぶのっ!」


 ……結局良くわからない謎の力だった。


「えっと……じゃあ魔王さんて人間界に追放されてきただけで、特に目的があってこの辺ウロウロしてたワケじゃないって事?」

 改まり頬杖を突きながら質問するクロスに、魔王は口をへの字に曲げてアゴを撫でる。

「う~む。目的がない訳ではない。寧ろ私個人としては目的だらけだが――そもそもとしてこの追放というのも名ばかりで、実際には追放された最下位の魔王は人間界を征服するという使命を持っているというか――ランキング最上位にいる魔王達『魔界十六神将まかいじゅうろくしんしょう』に人間界を征服してこいと命令されているのだ。ま、つまり今回は私が命令されている訳だが、魔界の連中は私に人間界を征服させておいて、これから魔界で魔王が増えたとしても最下位となった者を順次人間界に追放し、人間界で権力争いをさせて自分達は魔界での地位を安泰させようという腹積もりなのだ」

「え……じゃあ魔王さんて人間を支配しにやってきたの?」

 これには笑顔を消すクロスだが、対照的に魔王は大口を開けて天を仰ぐ。

「はっはっはっ。まさか! 実は私は約400年ほど前にとある人物に出会ってな? その人物に人間界の話を聞いて非常に興味を持ち、常々人間界に行ってみたいと思っていて、今ようやくその夢が実現したのだ! なので私は人間界の支配なんて微塵も興味がないし全く考えていない」

「あ~だから個人的には目的だらけなのね? でも大丈夫なの? その~魔界十六神将だっけ? 上の人達の命令無視しちゃって?」

 クロスの疑問は尤もだが、魔王は尚朗らかに。

「まあ、心配なかろう。魔界十六神将とは言っているが、私は実際に一人しか会った事がない。本当に存在しているのか、いないのか……ツチノコを探しているおじさんくらい存在が曖昧な奴等だ」

「いや、うん。ツチノコは幻かもしれないけど、探してるだけのおじさんなら実在してるハズなんだけどね」

「なにィ!」

 クロスの冷静なツッコミに魔王はイスから立ち上がりそうなほど驚く。

「バ、バカな……人間界ではツチノコを探しているおじさんがまだ存在しているのか……魔界では絶滅危惧種どころか絶滅したと言われているぞ」

「絶滅って……言い方」

 とクロスが零していると横からsiri。

「因みに魔界にはツチノコを探しているおばさんはたくさんいます」

「おばさんはたくさんいるのっ! じゃなんでおじさん絶滅したっ?」

 謎の現象である。

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