魔王と四天王
そしてやはりと言うべきなのか、siriが尻を挟むと話が脱線する……のではなく口を挟むと話が脱線する一同だが。今回は話が一段落した事もあり、くのいちが苦言を呈する事はなかった。
そしてその代わりなのか――いや。一段落したからこそなのか、ここぞとばかりに口を開いたのは珍しくクロスだった。
「あの〜ちょっといい?」
申し訳なさそうに小さく片手を上げるクロスに。
「うむ。どうしたクロスよ?」
と魔王が答えると。
「前に魔界十六神将の話は聞いたんだけど、四天王っていうのは?」
「おお、そうかクロスは初耳か」
と魔王が言っていると。
『待てサイ卜よ! お前侍女でもない一般ミニスカサンタに魔界十六神将の話をしたのか?』
食ってかかりそうな勢いで魔王に詰め寄るくのいちだったが、魔王はそんな彼女の両肩を押さえ。
「落ち着け。話したといってもその存在……魔界十六神将という名を教えただけで、十六神将の16人中15人が学校のクラスで浮いている存在だという秘密は教えていない」
この言葉に何故かくのいちは眉をハの字に曲げると。
『……? そ、それは寧ろ残った一人の方が浮いた存在だろうに?』
「む? 確かに……」
『いや、そんな冗談はどうでも良いのだ。だが、あまり魔界の事を部外者にベラベラと喋るのはどうかと思うぞ?』
「……部外者?」
呟く魔王が難色を示す。
「ショ夕よ。部外者は些か言い過ぎだな。クロスはクリスマスを私と共に過ごした仲なのだぞ?」
厳密にはクリスマス・イヴなのだが……まあ、ギリギリ嘘でもない。しかし今はそんな細かい事はどうでも良いのだろう。その証拠に――
『ご、ばぁぁああぁぁっ!』
くのいちが意味不明な声を上げて椅子の背もたれまで吹っ飛んだ。
「えっ? ちょっ、だ、大丈夫?」
と、くのいちを気遣うクロスに。
「……クククッ」
と不敵な笑みを浮かべるsiri。
そんな中でくのいちは――ゾンビを彷彿とさせるか頭と腕を置き去りにするかのようにして、体から起き上がると魔王の襟首を掴み。
『お、お、お前ぇえ! 私でさえ子供の頃しか一緒にクリスマスを過ごした事がないのにどぉおしてぇええ!』
「ん? いやだって我々は大人になったらすぐ魔王として人の上に立っていたから一緒に過ごせなくなっていたろうに?」
『そういう事を言っているんじゃないっ! が、もういいっ!』
と言うとくのいちは魔王を椅子へと投げ捨てた。
「うわ~。これもしかして魔王さんの無自覚ハーレムって結構筋金入りなのかな……?」
魔王とくのいちに聴こえないように呟いたのはクロスだったが、siriには聴こえていたようでsiriもクロスにだけ聴こえるように小さく呟く。
「クククッ。クロスさんも如何です? 入る資格は十分にありますよ。そして見ている分には楽しい事は私が保証します」
「え~ちょっと魅力的で悩んじゃうなぁ……?」
とまさかの満更でもなさそうなミニスカサンタだった。
――で。そのミニスカサンタが子犬のように魔王を威嚇しているくのいちを制するか再び同じ質問をする。
「で? 結局四天王というのは?」
「うむ。そうであったな?」
魔王は襟元を正すと。
「クロスよ。魔界十六神将が魔王ランキング2位から17位の者だというのは覚えているな?」
「もちろん」
と元気に頷くクロス。
「その十六神将のトップの4人。つまり魔王ランキングでいう2位から5位の者を魔界四天王と呼ぶのだ……というより、厳密に言うと魔界四天王と魔界十二神将の4人と12人を合わせて魔界十六神将と呼ぶのだ」
魔王の言葉にクロスは天を仰ぐかのように。
「あ~つまり徳川十六神将と同じ形式って事ね。で、魔王ランキング的には四天王が上で神将達が下って事か!」
これに魔王は頬に汗を垂らし。
「う、うむ……確かにそうなのだが……驚いたな? クロスは今時のギャルっぽいのに徳川十六神将を知っておるのか……?」
「え? そう? 普通今時のギャルって徳川十六神将くらい知ってるよ? もちろん全員名前言える訳じゃないけど徳川十六神将って名前くらいはみんな知ってる。それにホラ、あたしってサンタクロースガチ勢じゃん?」
「いやいや徳川十六神将とサンタクロースガチ勢の脈絡が全くないのだが……? サ、サンタクロースって徳川十六神将にいたっけ?」
と、後ろ頭に特大の汗を垂らす魔王であった。
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