第23話
「はい、白岩くん。お疲れ様ー。」
俺は白髪の男に封筒を渡す。
早速中身の札束を確認し、
「わぁこんなに!あざーっす!またなんかあったらいつでも連絡どーぞっすよ〜!僕、黒井さんのためならなんだってしますからね☆」
「学校にもちゃんと行きなよ」
「はーい☆」
そう言って部屋を出ていった。
俺は、目の前に転がっている女のバッグから、ブランド物の手鏡を取り出した。
「これ、記念に貰ってくね〜」
岡本渚……
「これで二人目……っと。
さて、柳原さんに迎えに来てもらうか〜
よーやく一花に会える〜♪」
酔いが回って裸でぶっ倒れているこの女をそのままに、俺はウィッグを被り、ホテルの部屋を出た。
かつてのあの日、間違いなく一花と俺を虐めた奴の一人だ。
お前はなんにも覚えてないだろうけどね。
「えっ、本当にいいのかい?まぁ俺は助かるけど……まさかキミが行くわけじゃないよね?」
大城さんとのやり取りが蘇る。
しつこく大城さんを誘っていた岡本渚。
来ないと仕事において支障を出させるとまで脅して来たらしい。
「大丈夫〜。いつも大城さんには会社での一花の様子報告してもらってて助かってるし、俺だって大城さん困ってたらちゃんと助けるよ」
とりあえず、とあるバーへと岡本を呼び出させた。
出向くのは大城さんではなく、俺……でもなく、白岩直希。
まだ17歳の高校生である彼は、俺が拾ったペットみたいな美男子だ。
家庭環境に難アリで、非行を繰り返していた彼はある日、ヤンキーたちにボコられていた。
それを俺が救い出し、俺の家が経営するバーに住み込みで働かせたらやけに懐かれてしまった。
が、まぁそれも俺の計算済みだ。
使える奴を周りに増やしておくに越したことはない。
しかも白岩直希は面がいい。
その容姿は、時に最強の武器になる。
岡本渚を白岩の働くバーに呼び出してもらった。
来ることのない大城さんを岡本が待つ間、白岩と親密にさせ、岡本はまんまと白岩を買った。
高校生とホテルに入っていく場面を俺が撮影し、ねじ曲がった性癖は白岩に撮影させた。
そして合流してからその場で速攻、岡本のスマホをハッキングし、会社や周囲の人間にばら蒔いた。
岡本渚も、この世からしばらくは、社会的抹消を食らうだろう。
「ま、こんなもんじゃ甘いんだけどな〜」
「?……なぁ、収録終わったらすぐ連絡しろと言っただろ?ここらで何してたんだよ?」
柳原さんは車を走らせながら、不審そうにバックミラーで俺を見た。
「ちょっとコンビニ寄ってただけじゃん。俺とのコラボ商品がどこも売り切れでさ〜、ランニングがてらこっちのコンビニまで来てよーやくあったの!ほら見て!」
「見れねーよ運転中なんだから!って、ランニング?!相変わらず元気だなお前……若いっていいな」
「ふふ、これ一花と一緒に食べよ♡」
「………。」
一花。待っててね。
俺の一花。
今、会いに行くよ。
これからも、一花だけが世界一幸せになれるように、俺はなんでもするよ。
だから一花……
「死ぬまで離さないよ」
スマホのフォルダを開き、一花だらけの写真の数々をスクロールする。
この花のような笑顔が、いつまでも自分のそばにありますようにと願って。
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