概要
生い立ちから学生時代、10年に渡る雌伏のフリーライター時代、
そして、朝日ソノラマでのジョブナイル(ライトノベル)作家時代、
バイオレンス&エロスをふんだんに散りばめた伝奇ノベルスを量産していく時代。
同じ時期に同じ分野で活躍した夢枕獏とのスタンスの違い。
1980年代から1990年代前半の時代の空気を味わいながら読んでいただけるように書いております。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!闇は光る
何かを考えていると、芋蔓のように関連したことが眼の前に次々と現れることがたまにある。
大河ドラマ「光る君へ」を録画で観ながら、2008年、五十一歳で他界した氷室冴子も平安時代ならば大河の脚本を書けたのではないかと惜しんでいると、その氷室冴子から生前のうちに頼まれて、彼女の葬式の葬儀委員長を務めたのが『菊地秀行』だったということを想い出した。
親しかったようだ。
すると、カクヨムの注目の作品にこちらの評伝がぽんと出てきた。
タイミングがいいので、せっかくだから興味深く読ませてもらった。
菊地秀行マニアでないのならコメントなど失礼だろう。サイレント読者で終わるつもりでいた。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!菊地秀行ファンは必見の評伝
『吸血鬼ハンター』『魔界都市』シリーズなどで知られるエンターテイメント文芸の巨匠・菊地秀行の生い立ちから現在までを追った評伝。
幼少期を過ごした千葉・銚子の町、家族関係と学生生活、作家デビュー前の翻訳者時代など、著者来歴などで皮相的に知るだけだった情報についても深く掘り下げられている。各話ごとに出典が明記されているのもうれしい。
菊地秀行ともに80年代伝奇ブームを牽引した夢枕獏との比較も興味深い。これまでいくつもの文学賞を受賞してきた夢枕獏に対して、菊地秀行は現在まで賞とは無縁のいわば”無冠の帝王”であることにもしっかりと触れられており、両氏の愛読者としてはおもわず唸らされる。
あの時代の空…続きを読む - ★★★ Excellent!!!偉大な作家の原点を丹念に描いたエッセイ
父・徳太郎との関係性の描写が印象的でした。店の経営に悩みつつも、息子に法曹の道を期待する父親の姿が生き生きと表現されています。「先生と呼ばれたい」という父の夢を、息子たちが想像もしない形で叶えるくだりには、感慨を覚えました。
銚子という港町の雰囲気も魅力的に描かれています。アウトローたちが幅を利かせる街の様子が伝わってきて、菊地作品特有の哀切感の源流を垣間見ることができました。
著名な作家の原点を丹念に描いたエッセイとして、読み応えがあります。菊地秀行というクリエイターの人間性や作品世界への理解が深まる小説だと感じました。彼の創作の源泉とも言える少年時代の体験を追体験できたことは、…続きを読む