第5話 有楽町虚界攻略作戦②

「ここは・・・予想通りレース場か」


私がゲートを通るとそこはバイクのレースコースであり、一台のバイクが走行していた。


「中隊長、おそらくあれが」

「ああ、この虚界のドリーマーであろう」


バイクが止まりヘルメットを外す。

顔が見えるとそれは刃車清であり、彼が誰もいない客席に手を振ると誰もいない客席から歓声と拍手が起きた。


「ちゅ、中隊長これは!」

「狼狽えるな!」


私は部下たちを落ち着かせる。


「ここは虚界、ドリーマーである彼の望む現象が起こるのはなんら不思議ではない。お前たちは私と一定の距離を保ちながら来い。決して私の合図があるまでドリーマーに武器を向けるな!」

『はっ!』


部下に言い聞かせ、私は刃車清のもとに向かう。

もしむやみに敵意を感じさせれば外に出てしまう可能性がある。

ここは慎重に歩み寄るように


「失礼」

「うん?あなたは?」

「私は虚界特殊部隊中隊長の渋川という者です」

「虚界特殊部隊!?」


刃車清は分かりやすく私を警戒する。


「落ち着いて下さい。私はあなたを傷つけに来た訳ではないのです」

「信じられるか!お前は俺をこの世界から連れ出すつもりだろ!!」

「否定はしません」

「やっぱり!」

「しかし、現世では御家族が心配されております」

「アイツらは俺の夢を馬鹿にした!アイツらは家族なんかじゃない!」


分かってはいたがやはり家族との仲は駄目でしたか。

それならば。


「君のバイトしている店長さんも心配していましたよ」

「店長が!?」


私は自前で作成した彼のバイト先の店長の顔を合成した映像を彼に見せる。


「店長・・・・・・」


ここで私は彼に追い打ちをかける。


「あなたは工学が得意だと聞いています。あなたにはまだ他にもさまざまな選択肢がございます。自身の能力を活かした道に進み多くの人にあなたの素晴らしさを」

「違う・・・・・・」

「はい?」

「違う・・・これは店長じゃない!!」


彼は渡したタブレットを私に突き出し見せる。


『清、帰ってくるんだ。君には才能がある。その脚でバイクレーサーは無理だ。だから』


私が事前に作成したが動画が流れる。


「あの人は無理なんて言わない。俺が脚を怪我しても諦めるなと支えてくれたんだ!」


彼はタブレットを投げ捨てる。


「やっぱり俺を騙すつもりだったんだな!お前らのこはやっぱり信用出来ない!俺の夢から出ていけ!!」


彼の体を黒い煙が包み込み変身する。

私はすぐに後ろに下がる。

煙から体と四肢を5つのバイクで構成された怪物が出てきた。


「出ていけ!!!」

「中隊長!!」

「分かっている。こいつを虚界から出すな!総員一斉発射!」


私の合図と共に隊員達がドリーマーに向けて発泡する。


「無駄だ無駄だ!!」


しかし全てバイクの装甲に弾かれ効かない。

ドリーマーはこちらに向かって走って来る。


「はぁぁぁーー!!」


ドリーマーは飛び、右腕のバイクを振りかぶる。


「全員退避!!」


ドリーマーの一撃は虚界を揺らした。

そして彼は私たちが退避する前にいたゲートを見る。


「しまった!?」


ドリーマーは我々に目もくれずゲートに向かって走って行く。

不味い!早く止めなければ!


「止めろ!彼を虚界出すな!」


しかし虚しくも彼はゲートを通ってしまった。

それと同時に虚界の崩壊も加速しだした。


「不味い・・・」

「中隊長!お怪我は!?」

「私は平気だ。他の者は?」

「皆、大きな怪我はありません」

「よし。ならばすぐに虚界から脱出する!隊員たちの確認後すぐに脱出し、逃げたドリーマーの討伐に向かうぞ!」

「はっ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る