第20話 憧れの舞台攻略

「耐久ゲーは苦手」

「反撃もしてこないただ殴るだけなんてとんだクソゲーね!」


テラーとウィズがゴーレムと交戦している中、イヨとアルテは碧を守る堅牢に苦戦していた。

斬っても撃っても、その都度その攻撃に合わせた防御形態をとりダメージを与えられた様子もない。

そして更に面倒なのは


「チッ!やっぱり無理か!」

「よいっと」


アルテが攻撃に見せかけてウィズとテラーの元に行こうとすると一部を紐状に変形させて二人の道を阻む。

アルテの脚に絡みついた紐をイヨが切断する。

鉄紐は力をなくしその場に落ちた。

そう、この鉄格子は二人がステージに行こうとするとそれを防ごうとするのだ。


「ありがとうイヨちゃん」

「どういたしまして」

「それよりどうする?この鉄屑、超無駄に硬いし、意思持ってるし」

「アルテ怒ってる?」

「安心してただストレスが溜まってるだけ」


そう言ってアルテは攻撃を再開する。


「それって安心?」


イヨもアルテの発言にちょっと疑問を持ちながら攻撃を再開する。


(いい加減に攻略の突破口を見つけないと。向こうも二人じゃきついっぽいし。それにしてもほんと面倒臭いわねこの鉄屑!鉄屑の癖になんでこうも使い分けが出来るのよ!)


銃弾を何発浴びせようと全て弾き返される。

イヨの斬撃に投擲もいなされたり盾で防がれる。


(何か、せめて力を少しでも削げれば・・・・・・ん?これは)


アルテが目を付けたのは先程イヨに助けてもらう時に斬られた鉄紐だ。


(そうか・・これなら!)


「イヨ、私が攻撃を仕掛けるからそれに合わせて鉄紐を斬って!」

「分かった!」


イヨは攻撃の手を緩めアルテの合図を待つ。


「乱舞!」


アルテが跳び上がりもう一度四方八方から銃弾の雨を降らせる。

そしてアルテの予想通り鉄紐を形成し、銃弾を弾いていく。


「今よ!」


アルテの合図と同時にイヨが鉄紐を切断していく。

イヨによって切断された鉄紐は次々に地面に落ちていく。

そして次第に形成されていく鉄紐の長さが短くなっていき、とうとう形成が止まった。


「やっぱりね。こいつ、一度本体から切り離されるとその効力を失うのよ」

「どこで気づいたの?」

「さっきイヨが助けてくれた時に斬った鉄紐よ。あれを見て、こいつが取り込む様子やこの紐自体が何かする様子も無かったからもしかしたらって思ったの」


アルテの予想は的中していた。

碧を護るあの鉄格子は高度な自律知能と対応能力を持ち合わせていた。

だが、それが裏目となった。

その都度それぞれの攻撃に適した防御形態を形成していれば逆にそれに適さない攻撃には弱いと言うことになる。

アルテの銃弾は一発一発がそこそこの威力を持つ。

だからこそ、それを何百発も受ければ必ず何処かが損傷を引き起こす。

故にあの鉄格子は受けるのではなく弾き飛ばすことを選択した。

逆にイヨの攻撃は一発のリロードが長い投擲や切断力のある斬撃。

それを防ぐには一点集中の防御と攻撃の軌道を変えることが最適解となる。

この2種の適応は言わば柔と剛、そして柔が剛の受けるべき攻撃を受ければそれは容易く破壊される。


「これであの鉄格子はただ彼女を守るだけ。私達を止めることは出来ないわ」


アルテとイヨはウィズとテラーのもとに向かう。

鉄格子は鉄紐を生成出来ず二人が行くことを許してしまった。


***


「ウィズ、そろそろ時間だ。一応猶予を持って後30分ってとこだろう」

「一応核の場所は分かったんだけど……」

「なに言い淀んでんだ?」

「お待たせ!」

「待った?」


もうそろって時に、アルテとイヨが来てくれた。


「いや、タイミング的にはバッチリだよ!」

「少しばかり二人だけだと厳しくてな。だがお前らが来たからにはその心配はないな。ウィズ、核の位置は分かるか?」

「うん!」

「オーケー。行くぞ!」

「「「了解」」」


俺、アルテ、イヨの3人がゴーレムに総攻撃を仕掛ける。


「3人とも、核は常にゴーレムの身体を移動してる。だからまずはその移動範囲を絞り込む」

「了解。アルテ、お前は俺と腕だ。イヨ、脚のスピーカーを任せる」

「「了解」」


テラーとアルテはテラーが変則的に移動し、そのことで絡まるケーブル。

そのケーブルの最も密度が高いところをアルテはワイヤー銃で巻き付け、ステージと固定する。

ワイヤーによりステージの端に腕を伸ばされ動けなくなるゴーレム。


「イヨ!」

「月光、下弦、返し!」


イヨの最初の一太刀でスピーカー本体を破壊、そして刃を返してスピーカーとスクリーンをつなぐケーブルを切断する。


「→%%÷¥+%〆%€#%!!??」


下の支えが無くなりゴーレムは体勢を崩す。


「ウィズ、核は今どこに」

「丁度、スクリーンと左腕のコードを行き来してる!」


なら、逆の右腕との切断は可能だが、そうするとゴーレムの動きを止める支えが左腕のワイヤーのみになる。

そうなるとかえって負荷に耐えきれずワイヤーが切れてしまう可能性がある。


「ウィズ、核がスクリーンに移ったタイミングで合図を!アルテ、まだいけるか?」

「早くしなさいよね!」


ワイヤー銃を引っ張りながら文句を言うアルテ。

ワイヤーを引っ掛けている天井ライトの支柱も悲鳴を上げ始めた。

テラーはゴーレムの正面に立ち、刀を鞘に仕舞い、体を前かがみに傾け、右手に鞘をそえる。


「緋罰、居合・抜刀」

「今だ!」

「・・・・・・桃炎鏡・虚トウエンキョウ・ウツロ


その一太刀は音を立てず、自然に…一瞬の時が流れた瞬間、ゴーレムの両腕は突然スクリーンと腕の接合部分が綺麗な切断面を見せ、崩れ始めた。

ゴーレムは支えが完全になくなり、後ろに倒れ込む。


「ウィズ、今よ!」


ゴーレムが完全に倒れ込む瞬間、ウィズが最後に決め込む。


「はああああ!!過電砲雷撃ブラックアウト!!」


超高電圧の電気がスクリーン全体に流れ、スクリーンは爆発する。

倒れたスクリーンからは光が完全に消えた。

それはこのゴーレムの、石上碧を守る、このスタジアムを攻略したことを意味する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る