第9話 祝勝会

その場にいた者全員が結界に注目する。

そんな中結界が解かれ中の煙が一瞬にして広がる

煙の中から人影が浮き出る。


「はっ・・・!?全員警戒体制!」


渋川はすぐさま警戒体制をしき、近くにいる隊員はその人影に銃を向ける。

その煙の中から人影が姿を現す。

静けさで隊員たちに緊張が走る。


「カオスの減少と虚界の消滅を確認した。これで我らの任務も完了した」


俺が渋川に向かって結果を言うが渋川たちは警戒を解かず銃を構えたままだ。

そして渋川が前にでる。


「貴様が、ナイトメアのリーダーか?」

「リーダーになった記憶はないが対外的にはそう取られるだろうな」

「そうか」

「改めて言うが、我らの任務は完了した。それでだ、我らは手柄などどうでもいい、だから今回の手柄は貴様にやる」

「どういうことだ?」


渋川は疑いの目を向ける。


「我らはあくまでも個人的依頼を受けているのすぎない。要は貴様らの尻拭いをしてやっているに過ぎないということだ」

「な、なんだと!!??」


明らかに渋川は怒り心頭になる。

しかしテラーはそんなのどこ吹く風か話を進める。


「あとは貴様らに任せる。では」


テラーの周りの煙がテラーを包み込む。


「ま、待て!」


しかし煙が消えると、その中にいたはずのテラーの姿はなく、いつの間にかイヨとアルテの姿も現場から消えていた。


***


事件の翌日


『やはり今日の注目ニュースといえば昨日の事件ですね』

『そうですね。なんでも虚界からドリーマー、夢人ゆめびとが現実世界に出てきたようですが期待の新星、渋川中隊長の活躍によってなんと死傷者ゼロだったとか』

『それは凄いですね!!』


ピッ


「渋川、今回の事件はお前の功績にしといた。くれぐれもナイトメアのことについては……あとは分かるな?」

「はい」


テレビを消した佐々木長官が渋川にそう言った。

渋川も素直に答える。

部屋に佐々木の秘書が入ってくる。


「長官、会議のお時間です」

「わかった」


佐々木長官は席を立つ、そして渋川に去り際言う。


「いいか。奴らは野良の覚醒者だ。ルールも周りを気にしない野蛮な奴らだ。くれぐれも」

「承知しています」

「ならよい」


佐々木長官は長官室を出る。

一人残された渋川は拳を握る。


「ナイトメア……何者なのだ……」


一人、テラーやイヨの姿を思い出し、佐々木長官が出てすぐに自分も長官室を出た。


***


「ということでイヨちゃん改め巫来ちゃんの初任務達成を祝してーーー、かんぱーーい!!!」

「おーー」

「乾杯」

「乾杯」


刃車清のドリーマー討伐から数日後、巫来の初任務達成の祝勝会を俺の家でやっている。

各々が手に持つコップを合わせ乾杯をする。

京子がジュースを一気飲みする。


「かぁ〜〜、いや〜やっぱり仕事終わりの一杯は格別ね!」

「姉さん何オヤジ臭いことを言ってるんだよ」

「京子シジ臭い」

「いや、元からだろ」

「ガーン!」


全員からオヤジ臭いと言われお手本のように落ち込む京子。


「それにしても思ったよりやるじゃないか巫来」

「確かに、あの渋川中隊長を圧倒するとは思わなかったよ」

「ああ、せいぜい五分五分だと思ってたんだかな」

「舐めすぎ。私はこんなもんじゃない!」


巫来は「ふん」と力こぶを作るポーズをとりアピールする。


「そうだな。次はもっと効率よく動けるように調整するか」

「それは僕に任せてくれ」


新は早速PCを取り出して作業を始める。

兎にも角にも今まで現地班が俺と京子の二人だったのが巫来の加入で安定したのは僥倖だ。


「そう言えばなんだけど、つい最近なんだけど、うちに妙な依頼が来たんだけど、しかもかなり高額な報酬を提示して」

「あら、報酬が多いことに越したことはないじゃない。こうして祝会ができるのもその依頼達のお陰だし。セイ君おかわりー!」

「へいへい」

「そうなんだけどあまりにも内容が怪しすぎて過ぎて・・・」


新は考え込む。

こんな依頼本当にする人がいるのか?それともただのいたずらなんじゃ・・・


「うお!?」


新は急に頬に冷たい物が当たり驚く。

謙醒が缶コーラを頬に当てたのだ。


「考えちゃ悪いとは言わないが、それは後でいいだろ。今は巫来の初任務を祝う会なんだからよ。楽しむ時ぐらい、存分に楽しもうぜ」


新は謙醒からコーラを受け取る。


「そうよ新!それとセイ君ピザとポテト追加お願い!」

「もぐもぐ」


京子と巫来が追加を要求する。


「仕方ないな」


謙醒はピザ屋に電話をかける。

新はその光景を見てPCを閉じる。


「姉さん、そんなに食べれるの?」

「平気平気、無理でもあんたら男子陣に食べてもらうから」

「まったく・・・・・・」


新も会話に入りその楽しい一時を楽しむ。

そしてなんとなく流していたテレビから聞こえる次なる任務。


『それでは地下アイドル人気総選挙開始です!』


しかし今は誰れもその耳には留めず祝いの一時に浸かっていた。

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