第8話 有楽町虚界攻略作戦⑤
「ヴヴヴァァァ!!」
ドリーマーが俺に向かって腕を振り下ろす。
俺はそれを刀で受け止める。
タイヤと刀が衝突するとそこから大量のカオスが吹き出す。
「このカオスの量、ギリレベル4に行かないぐらいか」
「ヴァァァ!!フン!フン!フン!」
ドリーマーが両手のタイヤで何度も俺に攻撃する。
俺がそれを防ぐ度にカオスが吹き出す。
このまま防ぎ続ければいずれカオスが尽きて・・・・・・なんだこの臭い?
気づけば俺の周りから異臭がする。
「ヴァァ!」
よく見るとドリーマーとの衝突でカオス以外に何か液体のようなものが飛び散っている。
これは……?まさか!?
「今だ!奴がドリーマーを引きつけているうちに攻撃だ!」
テラーがドリーマーを受け持ってるのをいいことに渋川が周りにいる部下に指示をだす。
隊員達は銃を構える。
待て!今ここでこいつに向かって銃なんて発砲したら火の海になるぞ!
「まったく、せっかく助けてあげたのに、どれだけ頑固なのよ?」
アルテが隊員達の構えていた銃を銃弾で飛ばした。
「イヨ、渋川をお願い。ザコは私が受け持つわ」
「りょ」
イヨは渋川を俺から離す。
「ヴァァーー!!」
今度はなんだ…!?
タイヤと刀の間から爆発が起こる。
俺はその爆発で引火したオイルの爆発によってドリーマーと離れてしまった。
ドリーマーと離れてしまった俺にアルテ話しかけて来た。
「あなたにしては少し遅いんじゃない?」
「周りに人がいて気が散るんだよ」
だが、イヨとアルテのおかげで今俺とアイツの周りには誰もいない。
それにさっきの爆発のおかげで周りが火の海になっちまった。
「ふん。ドリーマーは任せるから早くしなさいよ」
「任された」
ゲートを見るともういつ崩壊してもおかしくない程ヒビが入っていた。
時刻は日付がもう少しで変わる時だった。
「そろそろ刻が移り変わる」
俺は炎で周囲を囲い、炎でドリーマーの四肢を固定し、身動きを封じる。
「コレはナンダ!?」
「終幕といこう」
「ナニ?」
「
刀に炎がともる。
「お前の父の死因はバイクのエンジン部の不具合によるエンジン爆発だったな?」
「ナゼソレヲ・・・・・・マサカ!?」
俺の意図に気づいた彼は駄々をこねる子供のように炎を引きちぎるがそれに反応してより多くの炎が彼を縛りつける。
「ダセ!ダシテクレ!!」
俺はゆっくりと彼に向かって歩む。
「夢の時間は終いだ。その身で、己の自身の意思により、自ら目を覚せ」
「マテ・・・マッデグレ!!」
カオスと共に飛び散っていたのはオイル、父の死因が無意識に刻まれ、それに恐れ、溢れ出すようになったのか・・・
俺は炎を纏う刀をオイルに刺す。
オイルが発火しオイルの漏れる元であるドリーマーに迫っていく。
「イヤダ!・・・イヤダ!!」
「立ち向かえ。逃げていたは何も分からない」
「イヤダーーーーーー!!!!」
「真実を見よ。
「イヤダァァーーーーーーー!!!!!!!!」
火の鳥が彼に迫る。
彼は全身のタイヤを高速回転させ脱出を試みがそれも虚しく…
炎がドリーマーに触れ、結界内で爆発が起こる。
爆発音は結界の外にも響き近くのビルのガラスはヒビが入り割れる。
***
僕が父さんに憧れたのは物心ついてすぐのことだった。
母さんはよく僕を連れて父さんのレースに連れて行ってくれた。
「見て清、あれがお父さんよ」
母さんが指をさすバイクを見ると、そのバイクは目の前のバイクに吸い付くように後ろにピッタリ張り付いていた。
僕は母が握る手から抜けて目を輝かせながら父さんを目で追った。
「わぁ~~~!!」
その時だろう、僕がバイクに……父さんに憧れたのは。
レースが終わると僕と母さんは父さんの下に行った。
「あなた」
「おお、母さんに清じゃないか!」
僕は走り出して父さんに抱き着いた。
そんな僕を父さんは優しく抱きしめ返してくれた。
僕は顔を上げて父さんに言った。
「父さん、カッコよかった!」
「そ、そうかな?」
父さんは苦笑いし答えた。
「ええ、カッコよかったわよ」
「結局2位だったけどね」
「それでも僅差じゃない!あなたなら次は勝てるわよ」
「そうかな……?」
「父さんならいけるよ!!」
「そうよ」
僕と母さんの言葉に一瞬きょとんとする父さんだったがすぐにその顔はまっすぐ前を見ていた。
「うん、頑張るよ!」
「ぼくも将来父さんみたいなバイクレーサーになる!」
「そうかそうか!」
父さんはしゃがみ込み僕の頭を撫でこう言った。
「いいか清、バイクレースはエンターテインメントだ。人を楽しませるのが仕事だ。今のお前のようにな」
「うん!」
「俺はな、1位を取っても取らなくても、そのレースで一番観客を沸かせたレーサーが優勝だと思ってるんだ」
「うん!」
「だから、もしお前が本当にバイクレーサーを目指すなら、そんなレーサーになってほしい」
「うん、なるよ!たくさんの人を楽しませるレーサーに!!」
「ああ、楽しみだ」
しかし、その希望もすぐに潰え、絶望に変わった。
それから1年後のレースでゴール目前で1位に躍り出た父さん。
そのレースには僕も母さんと共に見に来ていた。
僕も母さんも父さんが1位になる夢が叶うと思った時それは起こった。
父さんのバイクが爆発した。
レースはもちろん中止となり、僕と母さんはすぐに父さんのもとに向かった。
でも炎が大きくて近づけなかった。
僕と母さんが見た父さんは全身が黒く焦げ僕と母さんが知っている父さんの面影がまったくなかった。
母さんは父さんに駆け寄ろうとするが救急隊員に止められ泣き崩れる。
僕は救急隊員の間をすり抜けて父さんに駆け寄る。
「父さん!!」
焦げてない右目で僕の姿を見た父さんは優しく微笑んだ。
それが僕が見た最後の父さんの姿だった。
それから僕は一度もレース会場に行ったことはない。
それでも僕はバイクを捨てられず店長の下でバイトをしてバイクの知識と技術を身に着けていった。
「それでもこんな化け物になったしまった」
明確の覚えている。
現実にならない夢を見て怪物となり、街を壊して多くの人を傷つけた。
バイクレーサーはたくさんの人を楽しませる仕事なのに……父さんと約束したのに……
「ごめん……父さん……」
「泣いてる暇があるなら前を向け」
「……!?」
後ろを振り向くとそこには記憶にある父さんがいた。
「とう……さん……」
涙が出た……辛い涙じゃない……苦しい涙じゃない……これは…
「父さん……」
嬉し涙だ。
僕は父さんのもとに向かおうとするが全然近づけない。
「清、バイクは好きか?」
父さんの言葉に僕は足を止める。
そしてすぐに頭を下げ土下座をする。
「ごめん…ごめん父さん……僕…たくさんの人に迷惑をかけた…たくさんの人を傷つけた……」
「清……」
「約束を破って……ごめん……」
今流れている涙は悔しさと申し訳なさの涙だ。
「泣くな、前を向け。誰かを傷つけたのならその人たちに謝れ」
「うん」
「そしてそれ以上に人を笑顔に、楽しませろ」
「ゔん……!」
「それがお前の目指すレーサーだろ?」
肩に何かが触れる。
顔を上げるとあの時、父さんが事故で運ばれる時、僕が最後に見た父さんの顔があった。
「うん!僕は…父さんのようにたくさんの人を楽しませるレーサーになるよ!」
僕がそう答えると父さんは満足そうに消えていった。
そして白い光が僕を包み込む。
今度こそ道を見失わない。
ありがとう……僕の目を覚まさせてくれて。
もしまた君に会えたのならその時は……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます