第7話 有楽町虚界攻略作戦④

「クタバレヨーー!」

「そっちが、な!」


かれこれ十何回も攻撃を受けているがこいつ同じ攻撃しかしてかないのは何故だ?


「キリガネェ」


ドリーマーの胴体と四肢をつなぐタイヤと拳、足に該当するタイヤの回転数が跳ね上がった。


来るか!


警戒度を上げ注意深く観察する。

しかし次の瞬間、ドリーマーが視界から消えた。


何!?いや、ここか!


俺は後ろを振り返り左腕に刀を添えてガードする。


「クッ、イテェなーおい」

「コレをフセグか」


なるほど、拳と脚のタイヤの回転は攻撃力とスピードを上げ相手の防御を崩す効果。

肩と腰のタイヤは可動域と瞬発力を上げる効果があるのか。


「ナラコレデドウダ!」


ドリーマーはまた拳と肩と足のタイヤを高速回転させ俺の周りを取り囲むように走る。


「ウケキレルカ!」

「チッ」


ドリーマーは高速で走りながら俺を殴ることで360度全体から俺を攻撃してくる。

だがテラーはそれを的確に防ぐ。


見えるは見えるが攻撃に転ずるのは厳しそうだな。

ならまずは機動力を奪うか。


「イヨ、アルテ!」




***



「バカな・・・・・・!?」

「当たり前」


イヨと渋川のバトルはなんとも一方的なものだった。

期待のホープと言われてる渋川であろうとイヨには敵わなかった。

彼は既に満身創痍で地に膝付けている。


「この私がこんな小娘に!」

「所詮はただ覚めただけ。私には勝てない。それと小娘はダメ」

「クッ!!」


渋川はイヨを睨む。


「イヨ、アルテ!」


奥の方からテラーの声が聞こえてきた。


「信号機を一本くれ!」

「りょ!」

「了解!」


イヨは近くにあった信号機の支柱を薙刀で斬る。

斬った勢いで飛んだ信号機は宙を飛び、アルテが一発、弾を信号機に当てテラーの上空に飛ばす。



***


「ナゼ!ナゼタオレナイ!?」

「なあ、そろそろ終わりにしないか?お前のバイト先のオッサンも言ってたぞ?」

「テンチョウガ?」


***


昨夜の夜中、刃車清が働くバイト先のバイク屋の2階。

その店の店長は和室で寝ていた。


「・・・ん?」


顔に月の光と夜風が当たり目を覚ます店長。

なんのことやらと光の差す窓を見ると黒ずくめの男がいた。


「な、だ、誰だ!?」


店長は驚き布団を被る。


「俺はテラー。ナイトメアの一人だ」

「な、ナイトメア?最近ニュースになってる奴らか?」

「その認識で間違いない」

「そんな人間が何故俺の店に」

「依頼だ」

「依頼?」

「この店で働いてる刃車清について聞きたい」

「き、清君が!清君は生きているのか!!」


先程まで怯えていた店長は必死に彼について聞いてきた。


「俺が来たということがその答えだ」


俺のことを知っているなら察しがつくはずだ。

俺がそのこと以外に現れるなどあり得ないのだから。

店長もそのことに気づき落胆を示す。

しかし店長はすぐに顔を上げ真剣な眼差しで俺に問う。


「あなたなら彼を救えますか?」

「保証は出来ないがな」

「それなら私は彼について知っていることは全てお話しします!」

「いいのか?それが何を意味するのか分かっているのか?」


俺に協力するということは刃車清の夢を壊すことと同義だ。


「分かっています。それでも夢に囚われるのは彼の為にならない。私はそう思っています」

「いいんだな?」

「はい」


屈託のない、芯のある目だな。

店長はそう言ってタンスから一つの箱を取り出す。


「それは?」

「清君の夢の元、あなたからしたら原因ですね」


店長が箱を開けるとそこには何枚もの写真があった。

その写真はバイクレーサーとそのレースの写真だった。


「この写真に写っているのが清君のお父さんです」


彼の父はバイクレーサーだったのか。


「清君はよくお父さんのレースを観に行っていたと言ってました。しかしお父さんはレース中、不慮の事故で死亡。清君も此間の交通事故で脚を負傷しました」


憧れの父を、父が最も輝く場で亡くし後に自分の脚も怪我を負い絶望を見たのか。


「清君のお父さんは有名なレーサーと言うほどではありませんでしたがそれでも息子の清君にとっては憧れのレーサーだったのです」


なるほどな。

俺はウィズに今のことを伝える。

これ以上は収穫は無さそうだ。


「お願いします!どうか・・・どうか清君を止めて下さい!彼は優しくて諦めない強い子なんです!彼なら今を乗り越えて夢を叶えられる!その力があります!だからどうか・・・どうか・・・!」


俺が部屋を出ようとすると店長が涙を流し土下座で懇願する。


「分かった。その旨、確かに受け取った」




***



「お前の言う店長はお前のことを心から心配し、信じている。お前はそんな人の思いも捨てるのか?」


上を見ると丁度信号機が俺の頭上にあった。

今だな。

俺はタイミングを見計らい相手の攻撃に合わせてこちらも応撃し、ドリーマーが一瞬スピードが落ちたのを見計らい高く飛び信号機を投げドリーマーの肩に挟み込む!


「ヌッ!?」


ドリーマーの左腕のバイクが爆発し飛んでいった。

その衝撃で体勢を崩したドリーマーの左脚を切り落とす。

その勢いのまま残りの右半分を切り落とそうとしたがドリーマーの雰囲気が変わった。


「ウルサイ・・・ウソダ・・・・・・ウソダーー!!!」

「うっ!?」


ドリーマーの体からカオスが噴き出した。

噴き出したカオスがドリーマーを包み込む。


「カアサンモ…テンチョウモダレモオレヲシンジテクレナイ!!」


カオスの中から出てきたのは斬られた腕と脚が再生され全身がカオスに汚染され黒く染まった。


「まさか、ここまでカオスを溜め込んでいたとは・・・」


だがドリーマーをよく観察すると全身からオーラとなってカオスが常に吹き出してる。

見たところ持って10分ってとこか・・・だが。


「テラー、まずい。虚界の崩壊が加速した」


やっぱりか・・・・・・

こうなったドリーマーは虚界から無理矢理カオスを引き出して自身を強化することがある。

だがそれと同時に虚界の崩壊も早まりタイムリミットが発生する。


タイムリミット残り10分

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