第1話 謎の少女


「うっ・・・!?ここは・・・俺の家か・・・?いやいや、ちょっと待て!何故俺の家に転移してる!?」


目が覚めると俺は神社ではなく俺の家にいた。

本来この転移という現象は通常虚界の消滅に伴いその夢の主、つまりドリーマーが最も落ち着く場所に転移されると言われている現象だ。

俺のように他者の夢に出入りした人間は転移の対象外のはず・・・

それに仮に虚界が消滅したとして何故俺の家が転移場所に?

いや、そもそもの話、あのレベルの虚界が消滅したとはとても思えない・・・・・・だが、今は考えてもしかだがないか。

頭を切り替え、俺はリビングでくつろごうとソファーに座ろとするとソファーに見た事ない少女がいた。


「な!?だ、誰!?」

「ん、ん〜?」


少女は目を擦りながら起きる。


「あ、いた〜〜」


日本人気質の綺麗な黒髪ロングの少女はふわ〜とした雰囲気でトコトコと近寄ってきた。


「謙醒起きた」

「いや、お前誰だよ、ってどうして俺の名前を?」

「謙醒ごはん」

「ご、ごはん?」

「お腹空いた。あとお菓子無いから明日の分買ってきて」


なんだこの子は、日本人形のように整った容姿の癖にやけにマイペースな…

少女がリビングのキッチンの方を指さす。

うん?キッチンに何かあるの…って!?


「な、なんだこれ!?」


テーブルの上がポテチにチョコにアイスの袋にジュースの空のペットボトルで溢れかえっていた。

俺は慌ててキッチンしまっていたお菓子の棚や冷蔵庫を確認する。


無い、無い、無い!?ほとんど何も残って無いじゃねぇか!!


スマホを開く。


俺が篠崎と別れて飯を食ったのが夕方の5時過ぎ、今が夜の8時ってことは、俺の予想が正しければこいつ、たったの2時間程度でこれ全部食ったのかよ!!


「謙醒、ごはん」

「いや、それ以前にお前は何者なんだよ!!」

「ん?私は管理者」

「管理者?」

「うん。だからごはん」


いや、どこでごはんと結びつくんだよ?


「それよりお前は誰だよ!名前は?」

「名前?名前は・・・ない」

「名前が無いのか?」

「うん。だから付けて」

「ええーー」


なんだこいつ?よく分からんが、こいつがあの虚界に関係する誰かであることは間違いない。

それに名前が無いのは不便だからな。

しかし俺のネーミングセンスはそんなにいい方ではないし・・・


「ミク、漢字で巫女の巫に未来の来で巫来でどうだ?」

「巫来・・・うん、謙醒にしては悪くない。グッチョブ」


こいつ・・・・・・!めちゃくちゃイラって来んのになんでこう・・・なんか、許してやりたくなるんだよ!


「謙醒、お腹空いた、ごはん」

「いや、お前、マジで俺ん家に住むつもりか?」

「もちのろん。私、家ない。だから謙醒、私、養う」

「なんの繋がりも見えないんだが…?」


女の子を見捨てるのも心痛むし、それにこいつは・・・巫来は絶対なにかある。

あのレベルの虚界と関係がある時点で野放しには出来ない。


「・・・・・・はぁ、分かったよ」

「流石、謙醒グッチョブ」


無表情の癖にやけに個性出してくんのはなんなんだよ。


「謙醒、ごはん」

「はいはい、分かりましたよ」


こいつ、あんだけ食ったのにまだ食うのかよ。




***



「ふぅーー、満足」


巫来はお腹をさすってイスに体を預ける。


それは満足してもらわなきゃ困りますよ!

白米大盛り10杯完食の上に唐揚げ50個平らげたのにまだ食われちゃ俺の稼ぎが全部飯代に消えるわ!

いや、もう消えかけてるか。


「五体満足の所悪いが聞きたいことがある」

「うむ、なんでも答えようぞ」


腹が満たされて機嫌良いのか分からないが、俺は皿洗いをしながら巫来にいくつか質問をする。


「巫来、お前はあの虚界のドリーマーなのか?」

「うん」


なんだコイツ、やけにあっさり認めたな。


「でも正確には違う」

「はぁ?」

「あの虚界は私の夢であり私の夢じゃない」

「自分の夢であって自分の夢じゃない?」


意味がわからん。

夢とはその夢の持ち主の欲望を形作ったもの。

夢を見ている時点でその夢の持ち主であることは間違いない。

だが巫来はそれは正しくもあり間違いでもあると言っている。


「結局、どっちなんだ?」

「むう、謙醒はやっぱりめんどくさい」


それは訳わからんことを当たり前の様に言われれて理解しろってほうが無理があるだろう。

てか、お前、俺の何を知ってるんだよ。

つかさっきから俺を知ってる風に言ってるなコイツ。


「答えは一緒。私の夢であって私の夢じゃない」

「結局それなんだな」


これ以上問いただしても無駄か…


皿洗いを終えコーヒーとココアを入れる。


「じゃあ、お前は何者なんだ?」

「私は管理者」

「管理者ねぇ~~……」

「うむ。管理者はあらゆる物事を管理するもの」

「それがお前の能力ってことか?」

「そうでもある」


結論、何もわからない。

結局、突然出現した神社の中にゲートがあって、そこにつながる虚界はかなり高レベルであり巫来の夢だということ。

わかることと言えばこれだけ。


巫来にココアを渡す。


「うむ。苦しゅうない」

「へいへい」


巫来は満足そうにココアを飲む。


「それを飲んだら寝ろよ。俺、明日学校だからその間は家にいろよ」

「そうなの?なら、私も学校行く」

「はぁ?無理に決まってんだろ。保護者もいないお前がどうやって学校に入るんだよ」

「謙醒ならできる」

「なに言ってんだ?俺の能力を頼るなら御門違いだぜ?」

「うむ……まだ育ちきってないのか…」


巫来はココアを置き、俺に飛び掛かる。


「よーーー」

「ちょっ!?」


俺は倒れ、巫来が俺の上にのり馬乗り状態に。

な、なんだコイツ急に!?


「よ」

「んん!?」


巫来が俺にキスをする。

しかもただのキスじゃない。

舌を絡ませてくる大人のキスだ。


「ぷはぁ~」

「ぷはっ!?」

「あ~れ~」


俺は巫来を突き飛ばす。


「なにすんだ!」

「うむ、なかなか悪くない」

「ほんとに何言ってんだお前!!もういい俺は寝る!お前はそこのソファーで今日は寝てろ!掛け布団は奥の部屋にある!」


俺はそう言って自分の部屋に行く。


「おやすみ~~」

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