第2話  転校生

「ふぁ~~」

「謙醒おはよう。朝ごはん」

「……」


朝起きてリビングに降りるとよだれを垂らしながら朝食のスタンバイをしている巫来がいた。

謙醒は目を擦りこの光景が本物か確かめる。

しかし、目に映る景色は変わらない。

夢じゃなかったのかーー。

そういえば巫来のやつ昨日はここで寝たんだっけ……

ソファーを見るとちゃんと掛け布団があった。

ちょっとやり過ぎたかな……


「悪い、昨日は言い過ぎた」

「平気、気にしない。それよりごはん」

「……了解」


俺は朝食の準備に取り掛かる。


「学校から帰ってきたら布団と洋服を買いに行くぞ」

「うむ。謙醒は思ったよりダサい」

「俺のじゃねぇよ!お前のだ!!てかお前どこで俺の服見つけた!」

「洗濯機にあった」


コイツ、朝からバカにしやがって……

今度からは寝る前に洗濯物を取り入れておこう。


「ほらよ」

「うむ」


今日の朝食はベーコンエッグにトースト、デザートにゼリー。


「おかわり」


巫来はむしゃむしゃとすぐに食べ終えてしまった。


「はぁ、俺のやるから少し待ってろ」

「うむ。謙醒優しい」


クソ、無表情なくせにそれがギャップ萌えで可愛いなおい!


それから大量のベーコンエッグとトーストを焼いた。

そして巫来はそれを軽く平らげた。

これ毎日続くのかよ……依頼増やさないとな…

謙醒は巫来の爆食っぷりに自分の財布事情にかなりの危機感を感じた。


「満足」

「それはどうも。もうそろ俺は学校に行くから家でおとなしくしてろよ」

「うむ」


俺は学校に向かう。



***


「ねえ見た昨日のニュース」

「見たよ。またナイトメアに先越されたんだってね」

「国もがんばってやってるみたいだけどレベルの低い依頼にはお金と取るらしいし」

「ナイトメアの依頼はその半額以下だからね。私も依頼するならナイトメアかも」

「私も」


学校に着くとクラスのみんなが昨日のニュースの話をしている。


「おはようセイ」

「おはようアラタ


教室に入ると早速、新が声をかけてきた。


「朝から昨日のニュースの話題で持ち切りだね」

「そうみたいだな」

「最近じゃ他にも野良の覚醒者がグループを作ってるみたい」

「ああ、関西じゃあすでに民間組織で依頼を受けてるんだっけ?」

「うん」


新はパソコンを取り出して、その民間組織のホームページを見せてくれた。


「名前はア・ラーム。評判は半々かな?既に数十人を超えてるけどやっぱり依頼の達成率は人によって差があるらしい」

「死者は出てないんだな」

「今のところはね」


キーンコーンカーンコーン


チャイムが鳴り新はパソコンをしまう。

ぼさぼさ髪の男性、担任の吉澤先生が入って来た。


「よろこべーお前ら、転校生だぞ。しかも美少女だぞ」


吉澤先生の美少女転校生発言にクラスが沸く、特に男子勢はテンションが高い。


「すごい盛り上がりだね」

「こんなに冷めてる俺らの方がおかしいだけだ」

「そうかもね」


俺と新がそんな会話をしているとクラス全体から歓声が沸き上がる。

俺と新も教室の前扉を見ると一人の女の子が入ってきた。

俺は彼女の姿を見た瞬間目を見開いた。


「な…!?み、み……!?」

繋乃巫来つぐの・みくです。よろしく」

『うおおおお!!』


大きな歓声が教室内を包み込むが俺はそんなどころではない。


な、ど、どうして巫来が・・・!?


「セイ、繋乃って……」


新は小声で聞いてくるが俺にもわからない。


「席は…、謙醒の隣でいいか」


吉澤先生に言われるがままに巫来が俺の隣の席に座る。


「よろしく。

「……ッ!!」


***



「どういうことか説明してもらおうか」


俺は昼休み速攻で巫来を連れて人通りの少ない空き教室に向かい問い詰める。


「謙醒、意外と大胆」

「真面目に答えろ」

「えーーと、アブラカタブラしてちょちょいのちょいで、謙醒の妹になって転校してきた」

「お前ふざけてるだろ?」

「否、真面目」


アブラカダブラの何処が真面目だ!


説明し忘れたが繋乃っていうのは俺の苗字だ。


「というか、俺のことを知ってるみたいだし、知ってると思うが俺にはちゃんと妹がいんだが」

「そこは心配無用。従妹だから」

「説明になってねぇよ」


こいつ、ほんとに大丈夫か?

だが、それは一旦置いといて・・・いや置いちゃいけないんだが、とにかく置いといて。


「昨日のアレか?お前が俺にした」

「うむ、察しが良くて助かる」

「お前自分から答える気ねぇだろ?」

「それは心外なのであります」

「やっぱふざけてるよな?」

「・・・・・・否」


今詰まったなこいつ。絶対に詰まったな!

おいコラ、そっぽ向いて口笛吹くな、それもう自白と一緒だからな。

とは言え話を戻そう。


「お前が俺に何をしたかわからないが俺に何か副作用とかないよな?」

「大丈夫。元は謙醒の力、私はそれをちょっと刺激しただけ」

「それが管理者の能力って訳か?」

「肯定」


ふむ、人の能力を引き出す力、捨て置くのは惜しいな。

俺はスマホを開き二人に連絡をいれる。


「今日・・・ああ・・・・・・お前の家でいいか?・・・・・・サンキュ。巫来、家賃として働いてもらうぞ?」

「しょうがない」



放課後、巫来を連れてある場所に向かった。

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