第4話 有楽町虚界攻略作戦①

「下がって!ほら下がって!ここからは立ち入り禁止です!」


深夜の有楽町、いつもなら人が少なくなるこの時間、しかし今日は多くの人だかりと虚界特殊部隊と警察が跋扈していた。

そしてそこにいる全員がある一点に注目していた。

道路の真ん中に浮かぶ黒い穴、虚界へと続くゲートだ。

そしてゲートの前でスタンバッている部隊の中に一際目立つ装備を着ている男性。

彼が現場に入ると部隊の者達は一斉に敬礼をする。


「渋川中隊長!」


渋川彼方、若くして覚醒者として実績を勝ち得ている期待のニュービーだ。


「お前たち準備はいいか!」

『はっ!!』

「ではこれより有楽町虚界攻略作戦を開始する。今回の虚界はレベル3。ドリーマーが虚界から脱出する可能性がある。よって隊の一部は外で待機し、万が一に備えよ!」

『はっ!』

「では行くぞ!」


渋川を先頭に次々と虚界に入っていく特殊部隊。

民衆はその光景を動画で撮ったりと騒いでいる。

そしてそんな光景をビルの上では独特な衣装を身に纏った人影があった。


「あはは、ばっかね〜〜。あの人たち、自分達が今どんなに危険な状況か理解してるのかな?」

「してないからスマホ掲げて騒いでんだろ」

「眠い」


黒の巫女服を基調とした衣装に黒のベールで顔を隠すイヨはウトウトと首を縦に振る。


「ほらイヨちゃん、もうすぐだから頑張って!」


レインコートのような黒のフードを被りスカートにベルトを付け背中とベルトに銃を携帯し、片目の部分が少し欠けたマスクで顔を隠すアルテがイヨを撫で撫でする。


「眠い〜〜」

「それじゃあ余計眠くなるだろ・・・・・・」


俺は小さくツッコミながらデバイスを通じてウィズと連絡を取る。


「ウィズ、聞こえるか?」

『うん。聞こえるよ』

「今回のターゲットと渋川中隊長の情報を送ってくれ」

『オッケー』


すぐにデバイスが振動してウィズから情報が送られてきた。

俺は手で合図を出して二人を呼ぶ。

俺は二人にも見えるようにデバイスを開き二人も俺に寄って見る。


『今回のターゲットの名前は刃車清ヤグルマ・キヨシ


俺はウィズの説明を聞きながらデバイスに送られてる画面をスワイプしながらターゲットの情報を確認する。


『彼は昔からバイクレースにハマり将来の夢はバイクレーサーとSNSに載っていました。また彼はバイクレースのことを最高のエンターテイメントと謳っているらしい。しかし昨年、右脚と骨盤に大怪我を負ってそうです』

「なるほどな」


大体のターゲットの概要は掴めた。


「次は渋川の情報を頼む」

『了解。渋川彼方、若手ながら中隊長に昇り詰めたエリートで生真面目で責任感のある期待はホープらしい』

「私とは相性悪そ」


アルテが渋川の写真を見てウゲッてした顔をする。


「ノリで生きてるお前とは悪いだろうな」

『彼はドリーマーとの対話を試みることが多くレベル1では全て対話のみで解決してるっぽいよ』

「それはすごいな。どんなふうに話してるか知りたいもんだ」

『えーーと、別の方向性や道を諭したりする内容が多いって記事に書いてある』

「別の方向性や道か・・・・・・」


そうなってくると逆に不味いかもな・・・


「「「!!」」」


俺たちはゲートを見る。

安定していたゲートの枠が揺らぎ始めた、それに応じて周りにいた部隊も警戒度を上げる。

揺らぎ始めたな。

よく見ると、ゲートの外側がうっすらと波打ち揺れている。

それは虚界で戦闘が始まったってことだ。

そして揺らぎはどんどんでかくなっていく。


「ウィズ、データ収集頼む」

『了解』


俺はデバイスを閉じる。


「アルテ、イヨ、始めるぞ。各自の役割は分かってるな?」

「もちろん!」

「お任せ!」

「よし。持ち場につけ」

「「了解!」」


二人は自身の配置場所に向かった。

 

「避難命令を!」

「はっ!」


ゲートを囲んでいた部隊の奴が民衆を抑える警察に避難命令を出した。


「ここは危険です!避難を!避難を!」


警察官は避難誘導を進めるが進みが悪い。

民衆はゲートが気になって仕方がないようだ。


ドスン!ドスン!


その時、ゲートの中から大きな音が響き渡る。


「来たか・・・」


ゲートから腕・・・いやバイクが出てきた。


「ブオオオーーー!!!」


そして盛大なエンジン音と共に四肢と胴体、計5つのバイクで出来たドリーマーが出てきた。


「さぁ、終幕の刻だ」

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