第11話 現地調査①

「ここがスターライトが活動している会場か…」

「ほら、そんなとこで突っ立てないで中に入るわよ」


僕らは今日スターライトが活動拠点とするライブスタジオに来た。

中に入ると休日もあってか昼でも大勢の人がいた。


「かなり人がいるね」

「さすがは総選挙にメンバー半数以上が名前が載るグループってとこかしら」


他のエントリーメンバーに同じグループで半数以上の人の名前が載ってるグループはなかった。

つまり地下アイドル業界では、このスターライトというグループはかなり上位の人気を誇っているということだ。


「それにしても思ってたより女性客も多いわね」

「そうだね」


見る限り全体の2割ほどが女性客だな。

そんなことを考えていると会場が暗くなる。

僕と姉さん以外のお客さんがそわそわし始める。

するとステージにスポットライトが当たり7人の女性が現れる。

その瞬間会場は大盛り上がり。


「みんなーー盛り上がってる!」

『おおーーー!!』

「じゃあ早速始めちゃいますか!」

「それでは聞いてください。スターライト!」


曲が流れはじめ会場がさらに盛り上がる。


「新、情報お願い」

「うん。まず最初にお客さんに呼びかけたのが大空未森オオゾラ・ミモリさん。元気が良くてチームのムードメイカー的な役割を担ってる。彼女は総選挙にエントリーしてあった。そしてその次に声を出したのが英楓ハナブサ・カエデさん。かなり自由な性格で乗りがいいと評判で、彼女の名前もあった。そして曲名を言ったのが本郷静江ホンゴウ・シズエさん。かなりの高学歴でグループの衣装などの予算なども彼女が管理してる部分もあるみたい。彼女の名前もあったよ」

「へえ~、じゃああの子は?右でなぜか巫来みたいにちょっと感情がともしそうな子」


姉さんが指さしたのは汗一つかかず踊る子だった。


「彼女は一宮恋歌イチノミヤ・レンカ。英楓とはまた別ベクトルの自由さで、食べる寝るエロ本漁りが大好きでグループの妹的な存在でかなり可愛がられているみたい。彼女の名前はなかった」

「なるほどね。じゃあ逆にザ・アイドルって感じで踊ってる彼女は?」

「彼女は石上碧イシガミ・アオイ。アニメ、漫画、ライトノベルなどが大好きで、その一方グループ内の仲裁役でもあるらしい。彼女の名前もあった」

「なるほど、じゃあ左で他のメンバーよりめちゃくちゃ媚びってる子は?」

「彼女は橘都タチバナ・ミヤコ。幼いころから劇団に所属していて歌や踊りは得意で、笑顔を絶やさずミヤチーとニックネームで呼ばれているそうだよ。彼女の名前はなかった」

「劇団経験者の名前がない。怪しいわね。で、最後の一人が」


僕と姉さんが注目するのは真ん中で歌う他のメンバーとは一線をかすオーラを放つ女性。


「彼女はこのグループの絶対的エースで名前は天道明日香テンドウ・アスカ。そのビジュアルと優しいながらも凛とした性格がファンを魅了する。このグループの半分弱が彼女のファンで、総選挙の優勝候補筆頭だよ」

「半分って、相当ね」


それから僕と姉さんはライブを見た。


「みんなーー、ありがとう!!」

「選挙でも応援よろしくね!」


ライブが終わるとそのあとに握手会があるらしい。


「この後の握手会だけどどうする?」

「もちろん参加よ。私が大空未森、英楓、一宮恋歌に行くからアンタは残りの4人ね」

「わかった」


僕と姉さんは分かれて行動する。

まずは本郷静江さんかな。

僕は本郷静江さんの列に並ぶ。


「いつも見に来ていただいてありがとうございます」


次が僕の番だ。


「あら、初めての方ですか?」

「はい」

「そうですか。見に来てくれてありがとうね」

「いえいえ、総選挙も応援してますので」

「ほんと?ありがとう。でもやっぱり明日香ちゃんに勝てるかわからないけどね。最近じゃ増々気合が入ってるみたいだし」


本郷静江は奥の天道明日香のいる方を見る。


「やっぱり天道さんですか?」

「うん。やっぱり彼女は私たちの先をいっていると個人的に思うのよね。でもそれでも負けないように頑張るから応援してね」

「はい」


本郷静江さんとの握手会を終えて、次は石上碧さんの列に並ぶ。

並んでる間に考える。

実際に話してみて、知的な感じがした。

お姉さんみがあって何かを抱えている様子もない。

それに総選挙にそれほど執着している様子もない。

それともただそれを見せないように取り繕っているのか。

ただ個人的には彼女の線は薄いな。

そうこうしているうちに僕の番が来た。


「こんにちは。初めての方ですか?」

「あ、はい」

「そうですか!今日は見に来てくれてありがとう♪」


石上碧さんは僕の手を握って見に来てくれたお礼を言った。


「なんだか僕が想像していたザ・アイドルって感じでした」

「ほんと!ありがとう!私ね、昔からアニメが大好きでこのグループに入ったのもそれがキッカケなんだ!」

「そうなんですね。僕もアニメは好きですよ。まあ原作派なんですけど」

「原作もいいよね。特にラノベとかだとキャラクターの心情なんかがわかりやすく書かれてて共感するよね」

「はい。あ、それと総選挙応援してますから」

「え、ほんとに!?ありがとうね!!でもねやっぱり優勝は明日香ちゃんかな。彼女、いろんな仕事請け負ってて最近じゃよくテレビでもよく見るから。私も頑張らなくちゃって、思うんだよね」

「そうなんですか。僕からはなんとも頑張ってください」

「うん、ありがとうね!また来てね!」


僕は石上碧さんとの握手会を終えて次に橘都さんの列に並ぶ。

既に2つも並んだから人も少なかったのですぐに僕の番が来た。


「あら、初めてのお客さん。今日は観に来てくれてありがとう♪」

「は、はい」


最初の二人とは違い僕が初めてなのを確信を持って挨拶していた。

それに流石元劇団所属、対応が慣れてる。


「実は総選挙が気になって観にきたんですが、みなさんとっても輝いて感動しました」

「あら、ありがとう♪でも無理して輝いていたなんて言わなくていいのよ?」


あれ?もしかして盛って言ったのバレた?


「どうしてそう思うんですか?」

「んふふ、これでも劇団にいたのよ?嘘には敏感なのよ?」


これは少し甘く見ていたかもしれないな。


「そうですか。ですがそんな橘都さんはなんで総選挙に参加しないんですか?」

「ああ、元々私、そこまでアイドル一本で行こう思ってなかったから」

「ん?どういうことですか?」

「ほら、私の本業って演技じゃない?このアイドル活動は趣味と演技の練習を兼ねてるの。あ、でも勘違いしないでね。勿論地下アイドルの活動も本気でやってるわ。でもこれでそこまで名前を売ろうとは思ってないから参加を辞退したの」

「そうなんですか。余計なことを聞いてすみません」

「いいのいいの。何人かおんなじ質問をしてきた人もいたから。みんなちゃんと言ったら納得してくれたから」

「それも貴方の努力の賜物ですね」

「ありがと」


僕はもう一度軽く彼女と握手をして最後の列に並ぶ。


「これは・・・・・・」


他の三人に比べて長い、それも圧倒的に。

既に3人もの握手会に参加したのにまだまだこれほど人が残ってらなんて流石はグループ内でも一目置かれる存在だ。

さて、まず石上碧さんだけどまずは元気がいい。

他の二人と比べてなんでも全力という感じがした。

もしかしたら、その全力に何かある可能性もある。

そして橘都さん、3人の中で一番予想を見誤った人だった。

劇団所属の力を侮っていた。あそこまで人の見る目があるとは・・・・・・

しかし、僕から見てもあんまり何かを抱えていると言う感じはしなかった。

総選挙のことも本心だと思った。

でももしかしたらその持ち前の演技力で・・・・・・


「次の方ーー」

「あ」


そうこうしている内に僕の番だ。

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