第12話 現地調査②

「こんにちは」

「こんにちは〜〜♪」


私が挨拶をするとゆるふわな挨拶が返ってきた。


「あら、女の子のお客さんなんて珍しい!初めまして私は大空未森!」

「初めまして私は篠崎京子です」

「京子ちゃんね!」


未森は元気よく京子の手を握る。

新の言ってた通り元気のいい人ね。


「初めて来たんですけどほんとに素敵な歌でした。特に未森さんの歌声はなんだか元気が沸くような」

「ほんと!?そんなこと言ってくれるなんて嬉しいな♪」


未森は照れくさそうに頭を掻く。


「総選挙に出るんですよね。応援してます」

「ありがとう!でも私、別に1位とかにこだわってないんだよね」


未森は恥ずかしそうに言った。


「そうなんですか?」

「うん。私は私の元気を多くの人に届けたいと思ってるの。それが私の憧れたアイドルだから。だからこの総選挙で多くの人に私の元気を届けられたら私はそれでいいの」


ふむ、嘘は言ってない。後ろめたいものも感じない。彼女は白かしら。


「そうなんですか。ならそんなあなたが元気でいられるように私もあなたを応援しますね」

「ありがとう。またよかったら来てね」


私は大空未森の握手会を終えて次の英楓の握手会に向かう。


「こんにちは」

「あ、こんちわ~っす!」


私が中に入るとかなり緩いというか陽キャな挨拶が返ってきた。


「あれあれ?まさかの女の子?ちょーレアじゃん!?」


英楓は女の子が来たと分かるやかなり分かりやすくオーバーなりリアクションを取る。


「あたし、英楓よろしくね♪」

「はい、私は篠崎京子です。よろしくお願いします」

「京子ちゃんだね。よろしく。それとそんな固くなくていいから。あたしのことはカエデちゃんって呼んでね♪」


新はムードメーカーって言ってたけどこれってあれじゃない、俗に言うオタクに優しいギャルってやつじゃ?


「それにしても京子ちゃんめっちゃ可愛いよね。どうよかったら私たちと一緒にアイドルやってみない?」

「え~と、今日は弟と来ていて、それに私、そんなにアイドルには……」


英楓の誘いを京子は少し引きながら断る。


「そうか~残念。京子ちゃんなら絶対人気出ると思ったんだけどな」

「あはは、お気持ちだけ。それにしても私の偏見ですが、はなぶ」

「京子ちゃん?」

「えーと、カエデちゃん?」

「うん♪」

「みたいな人が地下アイドルやってるなんて意外でした」

「ああ、まあオタクに優しいギャルなんて2次元だけってよく言われてるしね。わからなくもないよ」


この人自分で自分がオタクに優しい系ギャルって自覚があるのね…


「でもね。あたしこのアイドル活動が好きなの。最初はめんどくさかったんだけど、みんなと会って、活動していく内になんだか楽しくなってきてね。だから次の総選挙も思いっきり楽しもうと思うの」

「そうなんですか」


彼女も大丈夫そうね。


「総選挙応援してます」

「ありがと♪でもできるならまたライブに来てくれたほうがあたし個人的には嬉しいかな♪」


英楓は満面な笑みでそう言った。

それに京子も答える。


「またの機会がありましたら必ず」

「うん。待ってるから♪」


私はボックスを出る次が最後。

京子は一宮恋歌の列に並ぼうとしたが彼女の握手会には列がなかった。

京子は恐る恐る中に入っていく。


「すや~~すや~~」


中に入ると机に頭を伏せ寝ている一宮恋歌がいた。

京子は優しく彼女の肩を揺らす。


「んん~?あれ?」


一宮恋歌は目を擦り眠気を覚ます。


「誰?てかなんでここに?張り紙は?」

「張り紙?そんなものありませんでしたけど?」

「ん?なんで?……あ、そうだった今日はちゃんと仕事しろって言われて、やることになってたんだった……」


一宮恋歌は面倒そうに座り直し京子を見る。


「まずは初めまして。私は一宮恋歌。よろ」

「よろしくね。私は篠崎京子」

「ふむ。京子よろしく。それじゃ質問。京子の好きなエロのジャンルはなに?」

「え?」


突然の癖の強い質問に京子は固まる。


「あのー好きなエロのジャンルって…」

「性癖は・・・人の本性を見せる・・・それが私の持論・・・だから教えて・・・京子のエロを・・・・・・」


京子は戸惑いながらも小声で語る。


「ええ~~と、基本的になんでもいけるかな?あ、でも触手とかそういうのは無理かな」

「ふむ、なるほど。リアリティ重視か。ふむふむ。ちなみに強いて好きなのは?」

「う~~ん、そうだな~、純愛系と逆NTRとSM系かな?」

「なんとカオスな組み合わせ」


顔はしいて変わらないが恋歌は驚きを見せる。


「だが、私に堂々とエロを語れるとは、その意気良し!京子、質問答えてくれた。だからなんでも質問して」

「じゃあ、恋歌ちゃんはなんで総選挙に出ないの?」

「面倒だから」


恋歌の答えは至極単純な答えだった。


「面倒?」

「うん。私なんとなくでアイドルやってるから。みんなお菓子くれるし、つまんなくないから。だから別にそこまで本気じゃない」

「そうなんだ。恋歌ちゃん人気出ると思うけど?」

「これ以上人増えたら面倒。疲れるから、今でも結構限界」

「そうなんだ。ちょっと残念だな」

「それはごめん」

「うんうん。でもその代わりまた恋歌ちゃん歌聞かせてね」

「しかたない。約束」


私は恋歌ちゃんと指切りをしてその場を後にした。

私は新がまだ時間がかかりそうだったから先に外に出た。


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