第13話 現地調査③

「それが天道明日香を除く6人と直接会った感想か」

「一宮恋歌…同類の予感…!」

「いや、あの子とシンパシーを感じるのはどうかと思うわよ」

「それには同感だが、それにしても全員個性的な面子だな」


新と京子が戻ってきて、それぞれが抱いたグループのメンバーの印象を聞いた。

個人的には6印象は、それぞれが特徴を持ちながら、互いの良さを引き出しているグループと言う印象を受ける。


「それじゃあウィズ、そろそろ聞かせてもらおうか。天道明日香はどんな人物だ?」

「う、うん。え〜と、ちょっと待って」


アルテから、ウィズはアルテと合流してから天道明日香を除く3人の感想を話したが天道明日香だけはまだ語言化に時間がかかっているらしいと報告を受けた。

そしてなんとなく感じが掴めたのか、ウィズが口を開いた。


「うん。天道明日香に初めて直接会った時感じた・・・いや、感じさせられたのは、そうその存在感だった」

「確かにステージでも一際目立ってたものね」


アルテも思い返えすようにウィズに同意する。

しかし、ウィズは首を横に振った。


「いや、姉さんが言っているそれとはまた別のものを感じたんだ。それは」

「覇気、か?」

「うん」


テラーの答えにウィズは頷く。


「覇気、王様?」

「王様って、イヨはなんでそこで王様に結びつくのよ?」

「いや、イヨの言っていることはあながち間違いじゃない。おそらくアルテが感じたのはアイドルとしての輝きや凄みだろう。だが、ウィズが感じたのはまた別、人としてのカリスマ性、王者の風格、それらに類似するものだろう」

「なるほどね」

「うん。テラーの解釈で間違いないと思う」


話を聞いてみてそれぞれが主人公級の個性を持っている印象を受ける。

そんな6人の中で圧倒的な存在感を放てるのは努力や経験では埋められない才能の一つだろう。

しかし、全員がとがり過ぎていて判別が難しいな。


「早期特定、最優先」

「そうだね。イヨの言う通りタイムリミットは近い。依頼のメールが来たのが今月のはじめのことだと考えると総選挙を期限と考えるのが良さそうだね」

「そういえば、その総選挙っていつ開催なの?」

「今月末、だいたい4週間後だね」

「時間ない」


残り3週間以内に依頼人は兎も角、ターゲットを絞り出さないといけない。

しかし、天道明日香…彼女はどっちみちまだ調べる必要がありそうだ。


「よし、天道明日香は俺が調べよう。ウィズ、お前は残り6人との接触を続けろ」

「え!?どうして僕が!?」

「お前が適任だと思ったからだ」

「ええーー・・・・・・」


ウィズはジド目でテラーを見るがテラーは言った。


「お前の頭脳で彼女たちをプロデュースしてみろ」



***


「京ちゃん弟おつーー」

「お疲れ様です恋歌さん。これ、今日の分です」

「ありがと〜。京ちゃん弟のお陰でレッスン短くなった」

「いえ、それほどでも」


セイに言われてスターライトのライブに通い始めて1週間、僕は毎回彼女達の握手会に参加した。

それから更に2週間ライブを見るたびに彼女達の改善点を洗い出してそれを纏めて彼女達のマネージャーに渡していた。


「それでは僕は他のメンバーの分もあるのでこれで。それと、恋歌さんはもっと自分なりに踊っていいと思いますよ。サボっていると言うよりそれが個性になりつつあるので」

「サンクス京ちゃん弟。あ、そうだ京ちゃん弟」


恋歌は新に耳打ちをする。


「嫌な予感がする。だから助けてあげて」

「それはどういう?」

「わからない。ただの勘、でも嫌予感がする。そして京ちゃん弟ならどうにかしてくれそうな気がする」

「考えすぎですよ」

「それならそれでいい。でももしその時はよろしくね。お兄ちゃん」


まるでいたずらっ子なような笑みを新に向ける恋歌。

恋歌さん、急に何を言って・・・でもあの感じ心に何かあるって感じでも無かった。

もしかしたら、恋歌さんが依頼人なのか・・・

新は次に人が少なかった静江の場所へ向かう。


「新君、今日も来てくれてありがとうね」

「いえいえ、すっかり僕も皆さんのファンになってしまいました」

「それは嬉しいわね。毎度のことだけど君の意見とっても助かってるからありがとうね」

 

静江は嬉しそうにお礼を言う。


「でもね。私の分は今日で最後でいいわ」

「随分と急ですね」


静江はまるで他人事のように黄昏ているような顔をする。


「うん。私、来週の総選挙が終わったらアイドル辞めるの」

「そうなんですか」


静江は優しくそう言った。


「そんなこと僕に言っていいんですか?」

「ほんとはダメよ。でもね、君なら話してもいいと思ったの。私もそろそろ進路を決めなくちゃいけない。もちろんアイドルが嫌いになった訳じゃないわ。かれこれ3年、みんなと過ごしてきたもの。だからね、私は最後は笑顔でみんなと別れたいの」

「……それではまるでそうならないような言い方ですね」

「私の思い違いならいいんだけどね」


静江は最後に新に笑顔でお礼を告げ、新はその場から離れた。


「アー君じゃん!やっほー!」

「お疲れ様です。楓さん」

「なによ~堅苦しいな~ここは楓ちゃんって呼んでよ~」

「いえ、楓さんと呼ばせてもらいます」

「そう……」


新がそう言うとあからさまに落ち込む楓。


「これ、今日の分です」

「あ、ありがとう……」

「楓さんの歌今日も良かったですよ」

「ほ、ほんと!!」


楓は子供のように前のめりになって嬉しそうに新に問う。


「はい。ただもう少し音程を気にした方がいいかもしれませんね」

「や、やっぱり?あはは……」


楓は恥ずかしそうに頭を掻く。


「ですがみんなに思いを伝えたいという思いが伝わってきました」

「ありがとう///」


楓はまるで普通の女の子のように照れる。


「それでは僕はこれで」

「う、うん。また来てね!」


楓は必死な声でそう言った。

新が次に向かったのは


「新君!今日も来てくれたんだね!」

「碧さんお疲れ様です」

「うん!ありがとう!それより今日も持ってきてくれたんでしょう?」

「もちろんです」


そう言って新は碧に新の作った資料を渡す。


「ありがとう!」


碧だけはマネージャーに渡すのではなく碧本人が受け取ると碧本人がそう新に頼んだのである。

新から資料を受け取るや否や中身を確認する。


「うあ~確かにそこ違和感あったのよね」

「碧さんは相変わらず勉強熱心ですね」

「え、あはは~やっぱり少しでもたくさんのお客さんを笑顔にしたいからね」


必死に読み漁る碧、それはまるで受験生のようだった。


「そこまで急ぐ必要はないと思います。碧さんが必死にやってるのはメンバーの皆さんだけでなくお客さんにも伝わってますよ」

「ありがとう。でも私、他のみんなと違って凄いところがない普通の女の子だから、その分頑張ってみんなについて行かなくちゃいけないの」

「あんまり無理しないでくださいね」

「うん。ありがとう、新君。ああ、それとみんなの様子が変なの」

「変…ですか?」

「うん。なんて言いか分からないんだけど、新君もなにか気づいたことがあれば教えてね」

「わかりました」

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