第15話 結果発表

「今日がとうとう」

「けっかはっぴょう〜〜」


今日は待ちに待った総選挙の結果発表の日。

なので今日は全員学校帰りにそのまま俺の家に来て全員で結果を見届ける予定だ。


「新、今どんな気分だ?」

「急にどうしたんだよセイ?」

「短い間でもお前ので育てあげたアイドル達だ。心配でもしてると思ってな」

「僕は平気だよ多分彼女達は大丈夫だよ。

「やっぱり、お前には分かるのか・・・」


謙醒はジンジャエールを取りに行く。


「ほら、二人とも!」

「はっじっまっるっよ〜〜」

「早く座りなさい」

「ちょっと待てよ京子」

「今行くから」


そして4人は結果を待つ。




***


「それでは参りましょう!第一回地下アイドル総選挙!」


司会者の気合の入った言葉と共に会場が拍手で包まれる。

その場にはスポンサーの人たちや今回の総選挙の候補に挙がっていた地下アイドルがいる。

もちろんスターライトから明日香、静江、楓、碧、未森の5人もいる。


「まずはこの地下アイドル総選挙とは何か概要を説明しましょう。名前の通りこの総選挙は地下アイドルを対象とした人気投票であります!現在日本の文化の一つでもある地下アイドルの知名度を上げるのが目的です!と、説明なんていらねよという方もいらっしゃいましょう。それでは早速トップ50から見ていきましょう!」


そして次々と様々な地下アイドルの名前が呼ばれていく。

そしてスターライトで最初のメンバーの名前がついに呼ばれる。


「続きまして第36位は……スターライト英楓!」


一緒のテーブルに座っていた4人からは大きな拍手をもらい、楓の名前が呼ばれると彼女はその場から立ち上がり壇上に上がる。

楓はマイクを受け取る。


「まずはありがとうございます。まさか私がここに立てるとは思いませんでした。これも支えてくれた仲間のみんなと応援してくれた皆さんのおかげです。改めてありがおとうございました」


最後にお辞儀をしてしめる。

テーブルに戻った楓はみんなから賛辞の言葉を受け取る。


「楓ちやんおめでとう」

「楓おめでとう」

「「おめでとう」」

「ありがとうみんな」


そして次もあまり間をあけずに呼ばれる。


「第30位…スターライト大空未森!」

「ウソ……!?」


未森は口元を手で押さえて静かに驚きの声を出した。

また反射的に席を立ち周りからの拍手を受ける。


「ほら未森ちゃん行ってらっしゃい」

「静江ちゃん」


静江が背中を押し未森は壇上に上がる。

未森はマイクを受けとる。


「あ、あのほんとに皆さんありがとうございます!」


未森はそれだけ言って深くお辞儀をする。


「これからも皆さんにたくさんの元気を届けられるように頑張ります!」


未森は改めて深くお辞儀をして、そそくさと壇上から降りた。



***


「どこに行くつもりだ、新?」


未森が壇上を降りるのを見終わった直後、新は手に持っていた飲み物を飲み干しリビングから出ようとしたところ謙醒に止められる。

その様子を巫来と京子が見守る。


「そろそろ行かなくちゃいけないんだ」

「まだ、30近い枠が残ってる。焦りは禁物だぞ?」

「ごめん。でも分かるんだ。彼女は呼ばれない。だから僕は彼女の元に行く」


それだけ言って新は家から出て行った。


「まったく、賢いくせに言葉が足りないんだから」

「謙醒は何か分かるみたいだけど?」


京子はやれやれと首を振り、巫来はじっと俺を見る。


「まあな」

「なら、最初から私たちにも分かるようにして欲しいわ。それで私たちはどうするの?」

「新、追いかける?」


謙醒は考える。

新が先に向かったのならどっちみち行き損になる可能性が高い。

それならその先に向かうか。


「いや、俺たちは最後まで結果を見てからだ」

「いいの?」


巫来が頭を傾げて問う。

俺はそんな巫来の頭を撫でながら答える。


「ああ、それでいい。それに時間は間に合う。CM挟んでる内に準備しとけ決行日は今日だ」



***


「続きまして第13位は……スターライト本郷静江さんです!」


名前が呼ばれると静江は静かに立ち上がり一度その場でお辞儀をする。

もちろん同じテーブルに座るみんなが笑顔で彼女を送り出す。

しかしその中で一人だけ仮面をつけている人物がいる。

静江は壇上にあがる。


「ありがとうがざいます。まだまだこの中では若輩者の私ですがこうしてこの場に立てることを光栄と思っています。本当にありがとうございます」


会場は拍手に包まれ静江はテーブルに戻る。

そして総選挙は進んでいきとうとう残りはトップ3にまで来た。

ここまで5人中3人が表彰されている。

本来なら明るいはずのスターライトのテーブルは重い空気たちこんでいた。


「いよいよトップ3の発表に移ります。それでは栄えある地下アイドル総選挙第3位は……フラワーガーデン藤乃紫苑さん!」


(やっぱりなの……私じゃ所詮真似事ってことなの……)


「続きまして第2位は……アルゴノート霧ヶ暮冬樺さんです!」


(そもそもそんな幻想を抱いていたこと自体間違っていたの……?)


「碧ちゃん……」


楓がどうすればいいのかわからないと思いながら碧を見る。


(何にも秀でいない私がそもそもこの場にいるのがおかしいの……?)


「…碧ちゃん」


未森が怖さと緊張で碧を見る。


「続きましてとうよう第1位の発表です!地下アイドル数百人の中の頂点に輝いたのは……スターライト天道明日香さん!!」


会場は今までにない大拍手に包まれる。

しかしそのとうの本人である明日香は浮かない顔で碧を見る。

碧はテーブルの下で拳を握りしめ下を向いたままだ。


「明日香ちゃん行って」

「碧のことは私たちが」


未森と静江の後押しで明日香は立ち上がり壇上に上がる。

明日香のスピーチはまるでアカデミー賞でも取ったかのような雰囲気を放っていた。

彼女のスピーチが終わり、そのまま総選挙は終わった。

スタジオの片付けも始まる時間になっても碧は動かず4人が碧を心配していた。


「碧ちゃん……」

「ほら、また次があるよ」

「だからそんなに気にしないで……碧ちゃん?」


明日香を除く3人が声をかけている途端碧は立ち上がった。


「ごめん。みんなおめでとう」


そう言って振り向かずスタジオから出ようとする碧。

彼女の脚は歩きから駆け足、そして走ってスタジオを出て行った。

彼女の悔し涙が一歩踏み出すたびに地面に染み渡る。


「碧ちゃん……!!」


碧を追いかけようとする未森だが明日香に止められる。


「明日香ちゃんなんで止めるの!」

「今の彼女を私たちじゃ止められない」

「それでも同じ仲間として3年間ともに苦楽を共にした友達として」

「そうね。ただのないもない世界ならそれが正しいのでしょう。でもこの世界じゃそれは無理。私だって行きたいわよ。だから私は私のできる最善で彼女を止める。だから見届けに行きましょう」


(後はお願いします。どうか彼女の夢を、輝をこんなところで途絶えさせないでください)


明日香は心の中でそう願い、その場にいなかった恋歌と都に連絡を取り、3人を連れてある場所に向かう。


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