第25話放置されてた買い物

「なんやかんや後回しになってたが今日こそお前の服を買いに行くぞ巫来」

「ええーー」

「ええーーじゃない!」


なんやかんや最近忙しくて後回しになっていたが巫来が家に来てからずっと彼女は妹のおさがりを着ている。

流石にそろそろ買いに行かなくちゃいけないと思い今日こそ行くと決めた。


「暑い、めんどい」


しかし当の本人がごねてしまっている。

確かに最近気温も湿気も高くなって外に出たくないのは分かるが流石にこれからも借り物を着続けさせるわけにもいかないし。


「とにかく決めたからには行くぞ。それに今日行かなくてもいつかは行くんだからな?ならまだこれぐらいの日に行かないと本格的に夏が始まったらこの程度が済まねぞ?」

「ム~~、一理ある……」


巫来は悩みながらもソファーから立ち上がる。


「仕方ない。行こう」


巫来は行くことを決断した。


「そうか。ならとっとと支度して行くぞ」

「わかった」



***


「巫来ちゃん可愛い~~!!」

「やぱっり元がいいからね。どんな服でも似合うね」

「無表情だから逆にお嬢様感があってなんか大人びて感じるな」

「……どうしてこうなった……」


近くのショッピングモール、俺はいつもここで日用品や食材などを買っている。

もちろん服などもここで調達している。

そして今、巫来は女性用の服やで京子の着せ替え人形になっていた。


「なぜ二人がここに…?」

「いや、やっぱり女物なら同じ女性に聞くのが一番だろ?だから普段のお前と一緒にいても平気な女性、つまり京子を呼んだってわけだ」

「僕はなんとなく気になったから姉さんについて来ただけだけどね」

「巫来ちゃんこれなんてどうかしら!」

「早く終われ……」


そう言いながら京子が持ってきた洋服を受け取ってまた試着室に戻って行った。


「セイ君、ちゃんと予算はあるのよね。ああ、最近稼ぎも良くなったしある程度は帰る程度にはあるぞ」

「ナイス~~、折角巫来ちゃんがいるんだもの。いつもご飯以外にあんまり興味お示さないから、こういう時買いだめておかなくちゃね」


そう言って京子はまた違う洋服を探しに行った。


「そろそろお昼だけどどうする?」

「とりあえずこれが終わらん限り無理だろう」

「噂と言うか付け焼刃の知識だったけど、女性の買い物、特に洋服はほんとの長いんだね」

「それは俺も思った。現実とフィクションってこういう日常的なことは割と現実参考にしてんだなって」

「謙醒、京子もう行った?」


こっそりと周りを警戒しながらここに来た時の服に着替えた巫来が出て来た。


「あれ、さっき京子に渡された服はどうした?」

「お腹が空いた。もう終わり」


気づけば3時間近くはこの店にいるし、何十着も着替えてる巫来からしたら相当体力と精神を持ってからただろう。


「ああーー!!ちょっと巫来ちゃんなんで出てきてるの!?てかさっき私が持ってきた洋服は!?」


ちょうど京子が新しい洋服を2着持って戻ってきた。

流石にこれ以上は巫来への負担が大きいか。


「京子、今回はそれで最後にしてやれ、流石の巫来も疲れたし、俺らも腹が減った」

「ええーーー……」


京子は分かりやすくふて腐れるが、反対に巫来は目をキラキラさせてまるで救世主かのような目で俺を見る。


「はぁーわかったわよ」

「理解があって助かる。巫来もそれでいいな?」

「仕方ない」

「まだまだ似合うと思う洋服たくさんあったのに……」


京子は分かりやすく聞こえるようにつぶやくが巫来は完全に聞こえないふりをして試着室に入って行った。

それから大量の服を持って会計に進む。


「それでは全点お会計で32万5800円です」

「なぁぁぁーーーーー!!!」


俺は枯れた声で目の前に表示されてる金額に驚愕する。

こんなん一般社会人の月給並みじゃねぇか……

俺は京子を見る。

俺の視線に気づいた京子は親指を立てる。

それを見て俺はガックシと体を曲げ、震える手でカードをスワイプする。


「はい、それではレシートです。ありがとうございました」


俺は未だ信じられずボーとなりながら買った洋服の袋を持ち、その隣で新が苦笑しながら残りの洋服の袋を持つ。



***


「じゃあこれとこれとこれ、あとこれもお願いします」


俺たちは洋服店を出てそのままモール内のファミレスに行った。

そして俺の気持ちなんてどこ吹く風か、京子と巫来がジャンジャン料理を注文する。

正直俺は今なにも食べる気にはなれない。


「ほらほら、そんな辛気臭い顔しないの!せっかくに楽しい食事がまずくなるでしょ!」

「まあまあ姉さん。セイは元から貧乏気質だから、30万以上の買い物なんてしてこなかったはず。そんな彼がたった一日で大金を使ってしまったショックでオーバーヒートしてるんだよ」

「なっさけないわね。男ならシャキッとして、ドーンと気前よく払いなさいよ」

「きた」


そうこうしているうちに料理が到着する。

巫来と京子の二人は料理が到着するなり、どんどんそれらを腹の中に入れていく。

見ているだけで胸焼けしそうだ。

そんな二人に対して俺と新はコーヒーとお茶だけという。


「合計3万4700円です」

「セイお願いね」

「ゴチになります」

「…………」


俺はまたもやバカみたいな金額を目にして思わず気を失い後ろに倒れ込んでしまった。


「セイ!?」


そんな俺をセイがなんとか支えてくれた。

その隙に京子が俺のポケットから財布を取り出してカードをスキャンする。


「ありがとうねセイ君♪」


***



「どうする、このままじゃほんとに破産する」


ファミレスから出た俺たちはモールの一角にある休憩スペースにいた。

そこのフカフカしているマットレスみたいなイスに座り、謙醒はやばそうな顔でぶつぶつ言っている。


「なに弱気なことを言ってるのよ?最近仕事も増えてそこまで困らないでしょ?」

「確かに最近増えてるけど、落ち着いてきたのも事実だし。セイが不安になるのも当然じゃないかな?」

「謙醒、大丈夫。巫来もっと頑張る」

「ならもう少しお手柔らかに頼むよ……」

「なにに?」

「食事」

「ふむ……それは難しい」

「ガクッ……」


巫来の無慈悲な回答に何かを悟ったのか体が白くなる謙醒。


「まさに廃人ね」

「いやいや、せめてさっきの食事代の一部ぐらい僕らが払おうよ!」

「あれ、知ってる」

「「うん?」」


急に巫来が奥の本屋を指さした。

その先には癒乃がいた。


「あれはうちの生徒会長だね」

「たくさん本を抱えてる」


よく見ると癒乃はたくさんの分厚い本を抱えていた。


「あれは」

「過去問ね。それと各教科の参考書」


新が答えようとしたところ京子が割って答える。


「それにしてもなんか顔が悪そうに見えるね」

「病気?」

「それにしては呼吸が乱れてる様子もないし、汗もそこまでかいてない。姉さんは何か心当たりはある?」

「いえ、此間癒乃とは一緒にお昼を食べたときは元気そうだったけど?」


三人が癒乃を気にしている中最初にその違和感に気づいたの巫来だった。


「あれ、発現前だと思う」


巫来が急に何か言い出した。


「どういうこと巫来ちゃん?」

「微弱、ほんの少量だけどカオスを感じた」

「「……!?」」


巫来の発言に京子と新は驚く。


「それは本当なの巫来ちゃん!」

「わからない。でもそんな感じがする」

「そんなわけ…!」

「なるほど」


戸惑い否定しようとする京子だがそれとは反対に新は納得する。


「どういうことよ新」

「いや、巫来の言っていることが本当なら、あの様子も頷ける。あれは多分何か思い悩んでいるのか。それとも何か思い詰めているんじゃないかな?」

「そんなわけ……」


咄嗟に否定しようとするが京子は徐々に自信がなくなり最後にはだんまりしてしまった。


「気になるなら姉さんが調べればいい。もちろんその時は僕らも全力で協力するから」

「そうそう」

「二人とも」

「もちろん」

「謙醒も!」


そう言って二人は謙醒の腕を無理矢理持ち上げる。

その光景に少し気を取り戻したのか、京子の顔色は良くなる。


「ありがとう。そうね。まずは今度癒乃にさりげなく聞いてみるわ」


京子は親友として、癒乃について調べることにした。

















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夢と幻想の理想郷(リベリタス) 鳳隼人 @dusdngd65838

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