第三章 救いの知識
第24話 学校での一幕
天道明日香からの依頼から数日、特段大きな依頼や時間も無く、俺たちは淡々と依頼をこなしていた。
最近ようやっと梅雨に入り始めたのか突然の豪雨や連日の雨予報も慣れ始めてきた。
「最近依頼が増えてきたね」
「そうだな。雨は人の憂鬱を誘うし、特に日本人はその風景を自分の心と照らし合わせる傾向もあるしな。必然的に仕方ないともいえるがな」
昼休み、俺は新と共に空き教室で昼飯を食べていた。
「それで、石上碧とは連絡を取っているのか?」
「いいや、そうすると僕の負けになっちゃうから、当分は僕の方から連絡は取るつもりはないよ」
「?」
負ける?なにか勝負でも挑んだのか。
新の雰囲気的にこれは相当後に決着がつきそうだな。
「それにしてもよかったの?巫来を教室を置いてきて」
「ああ、どうも今日は前々からクラスの女子から誘われてた約束があったらしい」
「そうなんだ」
「やっぱりここにいたのね二人とも!!」
突然空き教室のドアが開き、その前には健康的なスレンダーな体系にポニーテールで髪を結んだ女子生徒がいた。
「委員長か」
「なんだ美冬かよ」
「なにが美冬か、よ!私が前々から頼んでた資料、この昼休みまでなんだけど?いつになったら出してくれるのよ!!」
彼女の名前は
俺と新のクラスの委員長で2年生の生徒会副委員長も兼任している。
普通はクラス委員長と生徒会を掛け持ちするのはダメだが
「それで、どこにあるのよ?もしかして作ってないとかないわよねーー?」
「あるよ。ほれ、お前が来ると思って持ってたんだよ」
「なら、最初から渡しに来なさいよね!まったく、会長にどう釈明しようかしら」
とにかく自他共に厳しい。
ルールに厳格で生徒を平等に扱う。
それはこの学校では周知の事実であり、先生方も彼女を信頼してその地位を与えている。
「とにかく、私はもう行くから。それと今度からは私に事前に渡しておくこといい?」
「わーったよ」
「まったく・・・」
最後は不服そうだったが美冬は資料を持って急いで出て行った。
「資料なんていつ作ってたんだ」
「此間な美冬から押し付けられたんだよ」
「でもセイって副委員長じゃないよね?」
「そうだな。まぁでもあいつとはなんやかんや付き合いが長いからな。多分それが
理由だろう。そういえば京子はどうしたんだ?」
「姉さんは会長とお昼だからいいって」
「あいつ、生徒会長とつながりがあったのか」
「うん。姉さんと会長は2年生までクラス委員長と副委員長だったんだって」
「そうなのか、知らなかったな」
京子のやつがクラスの副委員長か……イメージはなかったが、改めて考えてみると、意外と役にあった配役とも思えなくもないな。
キーンコーンカーンコーン
「やべ、そろそろ急いで片付けねえと」
「そうだね」
謙醒と新はすぐに片付けて急いで教室に戻る。
***
「珍しいじゃないあなたから私を誘ってくれるなんて
「そうかしら?2年生の頃はよく二人でお昼を一緒に過ごしていたじゃない?」
学校の中には普段は何組かのグループがそこで昼飯を食べている学校でも有名な場所。
だがその中でも一際注目が集める一つの組があった。
真面目な性格とそれを体現できる能力を持ち、キリッとしたモデル体型で校内で絶大の信頼を持つ、
校内でも一線を画す美貌を持ち、性格が真反対の二人が一緒に食事注目しないというほうが無理である。
「それで、アタシに何か用かしら?」
「あら、親友と一緒に食事をするのに一緒に食事したいって理由以外の理由が必要なの?」
「あなた私を呼び出すなんてなんか面倒事の臭いがプンプンするわ!」
文句を垂れながら癒乃の隣に座る京子。
そして持ってきたパンをかぶりつく。
「それでどうなの受験の方は?」
「うん、まあ順調って言えば順調かしら?」
「医学部だもんね。それも国立の」
癒乃は国立大の医学部医学科を目指している。
「去年は驚いたけどね。あなたが生徒会長に立候補するなんて聞いた時は椅子から転げ落ちちゃったぐらいだもの」
「あらそうかしら?2年間私の補佐をしてくれたあなたなら驚かないと思ったんだけど?」
「それはあなたが医学部、それも国立に行きたいなんて言い出さなかったらね!国立大に進学するなら五科目七教科を履修して、同級生とそれよりちょっと上の年代の人達全体の中で上位の成績を取らなくちゃいけない。それに医学部ならなおさら。それなのにうちの生徒会は他の学校と比べて多忙なのよ。まともな勉強時間を確保できるとは思えないわ」
「そうね。でも医学部に進むなら生徒会会長を全うしたという実績が効いてくるの。だからあの時私はあなたに私を支えて欲しかったんだけどね」
「……ごめん」
京子は気まずそうに答えた。
しかし癒乃はそれを笑って返す。
「大丈夫、最初から気にしてないから。確かに最初は悲しかったけど、私の都合にあなたが合わせる必要なんて元からないのよ。だからもしあなたがあの時のことで思い詰めていたのならごめんなさい」
癒乃は京子に頭を下げる。
「別にそこまで思い詰めてないわよ。でもそうね、もしあの時、私があなたの頼みをオーケーしてらあんなことにはならなかったわね」
京子は思い出すように空を見る、それに釣られて、癒乃もあの時を思い出す。
「あーーもう!なんか辛気臭い感じになっちゃった!」
「んふふ、そうね。せっかくいい天気なんだし気持ちよくお昼を過ごしたいわね」
ちょっと重めの空気になったが京子がそれを無理矢理払う。
癒乃も笑いながらそれに便乗する。
それから二人はお互いに最近の近況や愚痴などを言い合った。
キーンコーンカーンコーン
「あら、もうこんな時間」
「やべ、アタシ次体育じゃん!」
「それはまずいわね。早く行きなさい」
「言われなくても。それじゃまたね!」
「ええ、また」
京子は急いで教室に着替えを取りに行った。
残された癒乃は誰もいないことを確認して大きく溜め息をついた。
「順調……ねぇ……」
癒乃は先ほどまでの雰囲気とは違い、重い足取りで教室に戻っていった。
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