概要
「心底、気味の悪い話をしよう。」
怖い話を書きたくて、気味の悪い話になってしまう。【櫻岾】の俯瞰図。もしくは、
《封印都市》
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!不思議の国のアリス、ならぬ邪悪の国に踏み込んだ覚めない夢の囚われ人
一人の勤め人が、駅で衝撃的な赤を見て、それに黄昏が重なり、なにかの扉が開いてしまったのか──。
一人称で、歪んだ世界へ取り込まれていくのが語られ、文章や言葉選びでもそれが表現されるのでちょっと視点酔いするかもしれません。
ホラーマンガではたまに見ますが、魚眼レンズから物語を眺めている気分になります。
こちらは、櫻岾を関連舞台にしており、そこにひそむものの関係で古英語がタイトルや章タイトルになっているものと思われます。艶っぽい。
(気になった方は是非「櫻岾奇談」をチェックしてくださいね~)
出られない世界に閉じ込められて揺らぎたい方は是非どうぞ。 - ★★★ Excellent!!!相貌が判別できる限界の闇の奥から、意図的に視線を向けられるような
作中に「誰そ彼」という「黄昏」への別の当て字が現れます。電球発明以前、日が落ちると他人の顔は見えませんでした。日が落ちかけて周囲が見えるか見えないかギリギリの時間帯にて、見かけた人が誰だか分からない、あの彼は誰だろうか、そのように問うので「黄昏」は「誰そ彼」なのです。
冒頭より文体からして邪悪な気配が忍び寄ります。恐ろしいものを、見るか、見過ごすか。見ると決めたら、心臓が凍るような体験をしても立ち止まってはいけません。
作中の時間帯は日中、見えないはずはありません。しかし、向こうがよく見えないのです。
相手の顔が判別できないなら、相手にはこちらの顔が判別できないはず。はずなのに、何故だ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!蹲る形が視界に浮かぶ。何度も何度も。
その文面からは仄暗い粒子の荒い画像が浮かびます。
不明瞭な世界は、読む者へ言いようのない不安を抱かせることでしょう。
心象風景のような車両内。
しっかりとした形を与えられない場所からはしかし、軌条を進む断続したジョイント音まで聴こえそうです。
この物語の中に描かれた人は、いつまでも駅と電車内を繰り返し乗り降りしているようです。
街の中心に、通例あるはずのない施設がある奇態な形状の街。
街に敷かれた鉄軌道には何が存在しているのでしょうか。
豊富な語彙から適切に選ばれた語句が巧みに並びます。
しかし並ぶはずの文字は、ただ整列することはありません。
独特の文字構成で形づくられた世界は読み手…続きを読む