「恐怖が切っても切れないほどに、暗闇、静寂、孤独と結びついているなどと思うのは誤りだ」とは、ラヴクラフトの短編の一説ですが。陽光や青空、それだけでは“そこ”にわだかまるその影は、決して祓えなどしません。吹きはらわれることなどなく、うずくまる影、その中から覗いた“それ”とは……。そんな恐怖を見事に切り取ったカットです。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(404文字)
端的で選び抜かれた美しい文章はまるで読者を夏の日に誘うようです。古いブラウン管の映像を観ているような、主人公の気持ちに引き込まれるような、長い物語を読んでいる錯覚がありました。心を掴んで離さないまま恐ろしい記憶へと引き込まれます。ラストの情景をぜひ確かめてください。