相貌が判別できる限界の闇の奥から、意図的に視線を向けられるような
- ★★★ Excellent!!!
作中に「誰そ彼」という「黄昏」への別の当て字が現れます。電球発明以前、日が落ちると他人の顔は見えませんでした。日が落ちかけて周囲が見えるか見えないかギリギリの時間帯にて、見かけた人が誰だか分からない、あの彼は誰だろうか、そのように問うので「黄昏」は「誰そ彼」なのです。
冒頭より文体からして邪悪な気配が忍び寄ります。恐ろしいものを、見るか、見過ごすか。見ると決めたら、心臓が凍るような体験をしても立ち止まってはいけません。
作中の時間帯は日中、見えないはずはありません。しかし、向こうがよく見えないのです。
相手の顔が判別できないなら、相手にはこちらの顔が判別できないはず。はずなのに、何故だか、視線を向ける意図を感じるのです。ほんとうに、何故なのか……
分からないものは、怖いですよ。