ホラーは人を怯え震え上がらせるもの。しかし本作から感じるのは、熱量。
語られる怪異は恐ろしいです。しかし怪異に匹敵するくらいに人の想いが熱いのです。
金融機関のエリートで遣り手というテンプレの上を行く破天荒な主人公に、土地への愛憎が交錯する周辺人物。彼らは待たず、ひたすら前に進みます。読み進むほどに彼らに引っ張られていきます。
それでも怪異の底知れ無さは…… いや、凄まじいものを心地よく見られました。といっても心底震え上がりましたが。
幽霊より人間が恐い、それはホラーのテンプレ。しかし本作に登場する人間は信頼できます。人っていいな。そう思えるホラーです(褒め言葉)。
異動先が〈又〉『忌み地』
この〈又〉って、一体なんでしょうか?
そう、主人公は呪われた闇を突き進むスーパースターこと、藤崎諒太氏です。
彼は、なんだか左遷してどうにかやめさせてやろう! 一見そんな風な境遇にも思えますが、ゆく先々で複雑怪奇な怪異に出会い、周囲を巻き込んで、その中に嬉々として飛び込んでしまいます。
主人公も魅力的ですが、登場人物ひとりひとりが、とても個性的手味わいのある人物なので、ついつい、あ、あなたはあの時の!?
ホラーでありながら、二度おいしい……そんな体験もできます。
今回は一体どんな怪異と出会うのか!?
ぜひともご一読を! 一押しです!