第5話 クラス①

 ぼくだってそこまで鈍感じゃない。黒紫憧こくしどうさんが言っている一緒のクラスになりたい人、というのはあるいは……程度には考えている。


 もし今の発言で、その期待を傷つけたのだとしたらとても申し訳なく感じる。段々とこちらの心臓は痛くなる。


 黒紫憧こくしどうさんは一呼吸置いて、「――そっか」と残念そうに肩を落とした。ぼくは掲示板へと視線を戻す。なぜだか黒紫憧こくしどうさんの方を見れない。「まあ、あれだよ。仮にその人が一緒のクラスでなかったとしても、同じ学校にはいるんでしょ。そんなに気を落とすことはないんじゃない?」と伝えたかった。でも発言できない。なんでできないか、全然わからない。


 隣の悲哀ひあいから目を逸らすように、掲示板を眺めまわす。自分の名前が載るクラスを探すのが目的だが、どこか上の空だ。どうしてこうなったんだっけ。新学年とはいったい。


 ぼくのクラスは…………。


 ぼくのクラスは…………。


 …………。


 …………。

 

 ……おや?


「おかしいな」


「え?」


「おかしい。ぜったいに、ぜったいに、おかしい!」


「あ、あの。どうしたの--白日はくじつくん?」


 ぼくが剣呑けんのんとなったからだろう、黒紫憧こくしどうさんがしどろもどろに問いかける。



 ええ、黒紫憧こくしどうさん。

 そもそもぼくの名前がどこにも載っていないんですよ。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る