第20話 黒紫憧さんと4月の日々⑩
ところ戻って体育館だ。
ぼくは一度死んで生き返ったのでなんとか耐性ついているが、ここに居る人たちはみんな初見だ。鷹の雄大なつばさを初めて目にした
それまでの部活動紹介代表たちは緊張と実力をない交ぜにした姿勢で壇上に立っていたが、
そして言葉を発する。
「えー新入生のみなさん。こんばんは。私は茶道部所属の
今日は
さて、今日は基本的な茶道の動きをお見せしようと思いますが、その前にひとつ。二年生としてお伝えしたいことがあります」
『
だからこれは、それ以外のため。
ぼくみたいな――といっては失礼だけど、ぼくより優れていて、けれど今日がんばって緊張を乗り越えようとしている、ほかの部活動紹介の人たちへのお節介に過ぎない。
コケコッコー。
「世の中には嘘もあります。真実もあります。
人を信じさせるのに、華美な装飾を用いるのは古くからの技法です。たとえば私が今日、茶道部のとっておきの衣装を身に
では、この場における嘘と真実の違いはなんでしょう。
それは悪意の有無だと、私は答えます。
最初から成功しないと思われている方向へ、すこしでも
相手の不利益を予想し、けれど己の利益のために心にも無いことを言う。これは悪意だと、私は考えます。
しかし、今日の部活動紹介はどうでしょうか?
みなさんの前に立った、一年先輩あるいは二年先輩がたは、みなさんを
絶対に違う――とは言えません。人間とは相手の心までを読める生き物ではないから。
けれど考えてください。想ってみてください。二千人近い人たちの前で、失敗を覚悟しながら、それでもパフォーマンスを行い、部活の魅力を披露しようとした姿勢を。
そこに宿る努力、熱意。そういったものは悪意に分類されるものでしょうか?
良いものをより良く見せようという姿勢は、果たして、
私から一つ、訂正があります。
自分から言っておいてなんですが、不器用なため。ほんとにごめんなさい。
世の中には
でも、期待を込めた誠実さ、もあるのです。
今日の私の発言と行動が、どうか。明るい未来を思った、すこしはハッタリを持つけど、でもステキや楽しいをみんなに伝えるための誠実さと思われることを願って。
これから、パフォーマンスを行いたいと思います!」
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